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意思決定の精度を高める重要なポイント

■経験と勘による意思決定の限界

 システム導入を検討されているクライアントの役員から、「ある会社に今回のシステム導入をお願いすることに決めました」という報告をいただきました。目下、急拡大中の数万人の登録者がいるサービスを運営している会社で、業務効率化のためにシステムを入れ替えることは最重要課題の一つでした。ですから、良いシステム導入出来て業務効率化できれば何も言うことはありません。

 しかし、今回のケースは、もろ手を挙げて賛成とは言い難いのです。何故か?それは、経験と勘にのみ頼りきった意思決定というのは、結果が上手くいけば良いのですが、結果が上手くいかなかったときに、リカバリーが非常に困難になるためです。

 今回のケース、もし、導入したシステムが会社にフィットしなかった場合、数万人の登録者へ影響を与えつつ、再度システムの選定をしていかなくてはなりません。この時、経験と勘に頼った意思決定であった場合、再びゼロからシステム会社を選定することになります。それは、何が原因でシステム導入に失敗したのかを把握することが出来ないからです。

 このように、優れた経営陣の経験と勘による意思決定というのは、スピード感があり、多くの場合、会社に素晴らしい成果をもたらします。しかし、一度失敗すると、次善の策を講じることが非常に難しくなってしまいます。そして、今回のクライアントのように会社の規模が大きくなればなるほど、その影響も甚大となっていきます。

■意思決定の精度を高めるには

 では、どのようにすれば、意思決定の精度を高めていくことが出来るのでしょうか?

 それは、意思決定のプロセスを定めることです。意思決定には5つのステップがあります。

①ゴール設定・・・何を意思決定したいのかを明らかにする
②情報収集・・・意思決定に必要な情報を集める
③分析/評価・・・集めた情報を分析/評価する
④最終判断・・・分析・評価結果に基づいて最終判断をする
⑤判断結果の振り返り・・・判断の成否と誤りがあった場合に対処法を検討する

 ここでは、システム導入する際のシステム会社選定のための意思決定のプロセスを例に5つステップを具体的にイメージしてみましょう。

①ゴール設定
 システム導入の対象の業務、および何を目指しているのかを明らかにします。

②情報収集
 次に、現状の業務を明らかにします。それには、業務フローを活用して、自社の業務を可視化していくことが大切です。更に、RFP(提案依頼書)を作成して、いくつかのシステム会社に提案依頼を行います。そして、各システム会社から提案内容を集めます。

③分析・評価
 各社が提案している、システムの機能、サポート体制、費用などを比較分析します。

④最終判断
 各社の提案を比較分析した結果を踏まえて、自社に最適なシステムを決定します。

⑤判断結果の振り返り
 導入から半年程度たった後に、①で設定したゴールに対して、どこまでミートしているのかを確かめます。ゴールに未達の内容があった場合には、何が想定と異なっていたのか、そしてどのようにすれば、リカバリーできるのかを検討します。

 以上の5つが意思決定の精度を上げるためのステップです。このステップを踏むことで、最初の判断が間違っていても、次に再び判断する際には、前回の失敗を踏まえた判断が可能となります。一方で、5つのステップを踏むことにはデメリットもあります。それは、意思決定に時間がかかるということです。ですから、状況に応じて、意思決定のスタイルを変えていけば良いと思います。

 ちなみに、冒頭のクライアントは、5つのステップを踏まずに、社長の経験と勘によって、システム会社を選定することになりました。話を伺ってみると、リスクはあるものの判断に大きな誤りはなく、寧ろ素晴らしい判断であると言えそうです。しかし、この会社、更に成長していくと思いますので、ステークホルダーが増えていくに従って、5つのステップを用いた意思決定が必要になるタイミングも出てくるはずです。

(第58回: 2019/11/20)