ミスを活かせる組織を作るための3つのポイント
■完璧主義の弊害
戦略や施策の実行支援や業務変革のようなコンサルティングでは、現場業務にかなり近いところで仕事をさせていただきます。そうすると、人為的なミスによって取引先や関係者に迷惑をかけてしまい、大変なことになるという事態を目にすることもあります。そのようなとき、ミスを引き起こしてしまった担当者の方から「リカバリーどうすればよいでしょうか?」と聞かれることもあります。
人間がやることですから、ミスは必ず起こります。「78:22の法則」または「ユダヤの法則」と呼ばれる考え方においても、人間はどんなに正確をきしたとしても78%は成功できても22%は失敗に終わると言われています。もちろん、100%の成功を目指して仕事に取り組ませるべきです。しかし、同時に、それでも22%の失敗は必ず発生するということが自然現象なのだということを理解させることが必要です。そして、次回は22%の失敗を100%改善するのだという姿勢を繰り返し保ち続けることが大切になります。
しかし、完璧主義者はこういう考え方があまり得意ではありません。担当者が完璧主義者だと、失敗をいつまでも悔やんでしまいます。ですから、失敗が重なると自信喪失をしてしまうことになります。また、完璧主義者が組織のトップになると、組織が立ち行かなくなります。なぜなら、上の人間が完璧主義者であると、失敗を許容できないからです。そうすると、必ず部下に対して、失敗を責め、絶対に失敗するなという指導をしてしまうのです。すると、当然ながら部下は委縮し、組織は疲弊していきます。
■ミスを活かせる組織
ではどのようにすれば、ミスを許容し、活かせる組織となるのでしょうか?
ミスを許容し、活かせるようにするには、3つのポイントがあります。
①小さくはじめる
一つ目は、小さく始めるということです。新しいことをしようとすると、失敗する可能性というのは高くなります。これは、未知の事をやろうとするときや、経験がないことをやろうとするときには、当たり前のことです。このような新しいことを始めるときには、一部分の取り組みを先行してやってみることが効果的です。システム導入などでは、パイロットなどと呼ばれますが、小さく始めてみることで、小さな失敗を数多く積むことができます。そして、その経験を活かし失敗への対策を講じることで、大規模に取り組みを進めるときに大きな、致命的な失敗が少なくなるのです。
②ミスから学べばよいのだという雰囲気をつくる
二つ目に重要なことは、22%は失敗するという自然現象を受け入れ、失敗を責めずに失敗から学ぶという前向きなカルチャーを育むことが大切です。こういった文化を醸成するには、中堅・中小企業においては、特に社長の考え方が重要となってきます。社長が完璧主義者だと、ミドルマネジメントは完璧を求められるために、部下にも完璧を求めます。すると、組織は疲弊してしまいます。ですから、まず、社長は、100%の成功を目指した前向きなチャレンジをした上での失敗に対して、あくまでも前向きな姿勢をとるべきです。
③失敗を想定しバッファー(余裕)を持たせた計画を立てる
三つ目は、失敗を織り込んだ計画を立てておくことです。システム導入のプロジェクトなどでは、システム開発の工数が伸びてしまい、予算が多くかかってしまうということが度々起こります。そのようなことを見越して、予算を多めに確保することがあります。また、会社の事業計画を立てるときにも、どこかに余裕を持たせておかないと、予定外の事態が起こった場合に会社のお金が回らなくなります。ですから、あらゆる計画に失敗を織り込み、人、時間・お金にバッファー(余裕)を持たせておくということはとても大切です。
以上の3点が、事業を続けていれば必ず発生することになる失敗を許容し、更に失敗を活かして、強い組織を作るポイントです。
(第57回: 2019/11/13)