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意見が割れるケースでの意思決定のポイント

■意思決定が難しくなる原因

 ある会社から「システム投資をすべきか否か意思決定ができなくて困っています」という相談を受けました。何でも、その会社では数年後に全社システムの刷新を予定しています。しかし、ある部門(以下A部門と呼びます)では、業務が非効率となっており、A部門だけで簡易的なシステムを先行して導入したいと検討していました。そこで、A部門の担当者が簡易的なシステムの導入を会社に提案したところ、問題が発生しました。

 会社としては、数年後に全社的にシステムの刷新を行います。そして、当然ながら今回、A部門が導入しようとしているシステム領域も対象範囲となっています。つまり、A部門が導入しようとしているシステムは、数年後には、全社的なシステムに置き換わってしまうのです。ですから、IT部門はA部門が先行してシステム投資することに反対しているのです。IT部門が言っていることは至極まっとうな意見だと思います。しかし、A部門からすると数年も待つことができないほど、業務が非効率となっており、更に現状のシステムのメンテナンス費用が高すぎるため、すぐにでもシステムを導入する必要があると考えています。これまた、A部門の主張も最もだと聞こえます。

 このように、全社的な視点からのIT部門の意見とA部門の意見は、真っ向から対立してしまっています。毎回、打ち合わせをするのですが、互いの意見を主張するばかりで合意に至ることがないということで、困ってしまっているとのことです。

■数字は異なる意見を統一する武器になる

 このようなケースでは、どのように対処すれば良いのでしょうか?

 合意に至らない原因が何なのかということを突き詰めて考えていくと、同じ指標で議論していないからだということが分かります。

  IT部門の主張: 数年後に実施する全社的なシステム刷新の際に検討すべき

  A部門の主張: 今すぐA部門だけに簡易的なシステムを導入すべき

 こういった、利害関係が異なる関係者の意見を合わせるには、同じ指標で検討することが重要です。そして、その指標は何かというと、ずばり「数字」です。つまり、会社全体にとって、どちらを選択することが良いのかを数字で示してみるということです。

 この会社のケースでは、A部門のシステム導入費用がいくらかかるのかということと、システム導入後の効果を数字で表すことが必要となります。導入後の効果に関しては、システム導入の業務効率化によって残業が少なる場合には、残業代の削減額を含めます。また、既存システムよりも保守運用費用が安くなる場合には削減額を効果の数字に含めます。仮に導入費用と効果の数字が下記のようになったとします。

  A部門へのシステム導入費用:1,000万円

  システム導入後の効果:年間500万円

(うち、残業削減分が年間300万円+保守運用費用の削減分が年間200万円)

 このような数字が出てきたとすると、A部門へのシステム導入費用は2年間で回収できるということになります。すると、全社的なシステム刷新のタイミングによって、A部門のシステム導入を実行すべきが変わってきます。

  全社的なシステム刷新が1年後の場合 ⇒ A部門へのシステム導入費用のうち500万円分が未回収となる

  全社的なシステム刷新が3年後の場合 ⇒ A部門へのシステム導入効果が500万円超過する

 ですから、全社的なシステム刷新の時期さえ決まれば、A部門のシステム導入を実施するか否かの意思決定はほぼ自動的になされるとっても良いかもしれません。このようになれば、全社的なシステム刷新の時期を合意することさえできれば良いということになります。このように、利害関係が異なる関係者間で意思決定をするに場合には、数字を使って評価基準を揃えることで、論点が明確になり、意思決定がしやすくなります。

(第114回: 2020/12/23)