業務改善を進めるための根本的な方法
■業務改善を阻む壁
先日、「業務改善を進めたいのですが、何をどう進めればよいか分かりません。」という相談がありました。何でも、採用が難しい中で今いる人員でより効率的に業務を遂行するために、業務の標準化やシステム導入を進めたいとのことでした。しかし、それが上手く進まずに困っているとのことです。話を伺うと、業務改善の取り組みで行き詰まる典型的な壁にぶつかっておられました。業務改善を進めようとするとどのような会社も似たような問題にぶつかります。
・課題が複雑で改善の糸口が見つからない
・課題が複数部門にまたがっていて、対処できない
・顧客に関わる業務の改善ができない
このような事態になってしまう典型的な理由は、課題の対応方針とその優先順位がつけられていないということです。では、なぜ優先順位がつけられないのかという真の理由は、課題が可視化されていないということに行きつきます。つまり、課題が文書化されていないということなのです。課題を文書化して眺めて見ることで、課題の分類ができ、対応方針も決めやすくなります。また、課題の担当者も明らかになっていきますので、部門にまたがった課題への対応方針も明らかになります。そして、対応方針の効果や難易度も明らかになり、優先順位もつけやすくなります。
■課題の文書化のコツ
では、どのように課題を文章化していけば良いのでしょうか?
課題を文章化するときには、課題一覧を作成することが基本となります。課題一覧を作成する時のポイントは5つあります。
①課題を列挙する
まずは、課題を表形式で列挙していきます。この時に注意すべきは、一つの項目には一つの課題を記載するということです。このことで課題の重複を防ぎやすくなりますし、後に課題を分類することや課題の対応方針を決めることがスムースになります。
②課題を分類する
課題をリスト化した後は、課題を分類します。課題を分類するときには、何等かのフレームワークに沿って分類していくことで、課題の重複や抜け漏れを確認することが出来ます。全社に跨る課題であれば、研究開発、製造、営業、サービス、経理、人事といったバリューチューンごとに課題を整理することも有効です。あるいは、PPTの観点、People(組織・マネジメント)、Process(プロセス)、Technology(システム・技術)で整理していくことが有効かもしれません。いずれにしても、課題を分類・構造化することで、課題の重複や抜け漏れを無くし、全体感を把握しやすくなります。
③対応方針を決める
次のステップでは、課題の対応方針を決めます。課題の対応方針を検討するときには、目的に応じて検討を進めることが重要です。今いる人員でより効率的に業務を改善することが目的であれば、業務の標準化やシステム化を見据えた検討が必要となります。他方、人員削減がどうしても必要なのであれば、アウトソースも視野に入れて対応を検討することになります。また、対応方針には、短期的施策と長期的施策というふうに、時間軸の観点も盛り込むことで、優先順位がつけやすくなります。
④効果を定量化する
更に、対策によってどの程度の効果があるかを明らかにしていきます。そうすることで、実行のための優先順位がつけやすくなります。
⑤優先順位を決める
最後に、短期施策なのか、長期施策なのか、効果はどの程度見込めるのかという情報に基づいて、対応方針の優先順位を明らかにします。優先順位が明らかになることで、実行に向けた具体的な手順が明らかになり、実行しやすくなります。
この5つのステップを経ることで、課題の可視化を進めていくことができると思います。なお、会社によっては、本業が忙しく課題の可視化に時間がとれないということもあります。また、課題の分類や構造化については、第三者が行った方がスムースに進む場合もあります。そのようなケースでお困りの場合には、ぜひ、お気軽に弊社にお声がけいただければと思います。
(第113回: 2020/12/16)