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社員が前向きになるデジタル化

■デジタル化後の姿

 会社のデジタル化や業務変革を実施するときにネックとなるのが、変革後に自分たちの仕事はどうなるのかという不安を社員が感じてしまうということです。例えば、「ITツールを活用して仕事を自動化していくと自分の仕事が無くなってしまうのではないか?」という不安を社員が感じてしまうということです。

 社員がこのように、変革後の姿に不安を感じていると前向きに変革に取り組もうという気持ちになりません。逆に、不安感が大きい社員というのは抵抗勢力となり、変革の足を引っ張るということになりかねません。このような状態では、デジタル化や業務変革を成功させることは難しくなります。

 かといって、社員の現在の仕事の内容ややり方がほとんど変わらないような形だけのデジタル化では何の意味もありません。むしろ、投資対効果の面ではマイナスになってしまいます。そうであれば、デジタル化や業務変革など初めからやらなければ良いということになってしまいます。であれば、デジタル化や業務変革を行うということは、必ず社員の仕事の仕方に変化が生じるのだという前提に立って取り組みを進める必要がでてきます。このような前提に立つときに、社員の不安感を軽減し、前向きに取り組みを進めるためにはどのように進めれば良いのでしょうか?

■前向きにデジタル化を進めるために必要なこと

 社員の不安感を減らし、前向きにデジタル化を進めるためにはどのような手順を踏めばよいでしょうか?

 3つのポイントがあります。その3つとは、「①目的の明確化」、「②デジタル化後の姿の明示」、「③業務移行の計画」です。

①目的の明確化

 デジタル化によって何を得ようとしているのかを明らかにすることが何よりも大切です。例えば、採用難によって人が足りていないので、残業が多くなっている状況であれば、残業時間の短縮を目的として掲げることが出来ます。残業代の削減による効果と投資額を天秤にかけることで、投資の意思決定も行いやすくなります。あるいは、ペーパーレス化やリモートワーク促進などを進めたいということであれば、新しい働き方の実現が目的となります。

 あるいは、業務を徹底的に効率化して、極端な話が3人で行っていた仕事を1人で行えるようにしたいと考えているような場合はどうでしょうか?このようなケースでは、余剰人員に新しい仕事を用意することが必要となります。例えば、余剰人員が携わる新規事業の立ち上げなどの仕事が必要になります。日本の会社はジョブ型雇用が浸透しているわけではありませんので、簡単に別の会社に同じような条件で転職できる人というのはそれほど多くはありません。ですから、結果としてリストラとなってしまうような取り組みに前向きに関与することは不可能です。この事態を避けるために、効率化した結果の余剰人員の受け皿として新規事業などを用意することが必要となります。

②デジタル化後の姿の明示

 変革の目的が明確になった後には、デジタル化後の姿を具体的にイメージさせることが重要です。残業時間が減り定時に帰宅できる姿や、リモートワークがストレスなく出来ている姿を示します。あるいは、現状業務を効率化させたうえで、新規事業に取り組んでいるような前向きなイメージを共有することが重要です。

③業務移行の計画

 そして、変革後には業務が必ず変わることになりますので、業務移行のためのマニュアルやトレーニングを適切に計画していくことも重要です。この移行計画が欠落していると、ITツールを導入しても使われないというような事態に陥りがちですので、忘れないようにしたいところです。

 このように、デジタル化や業務変革を進めようとすると、社員は仕事がなくなってしまうのではないかという不安から取り組みに抵抗する場合があります。そのような社員の不安を取り去って、前向きに取り組みを進めるためには、目的を明確にして、デジタル化によるリストラは発生しないことを示すことが求められます。

(第115回: 2020/12/30)