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ツールありきのシステム導入が失敗する理由

■ツールありきのシステム導入

 「AIやブロックチェーンを使って何かできないですか?」というような相談を受けることがあります。「DX(デジタルトランスフォーメーション)をしたいのですが、何をすればいいですか?」というのも同じような質問といえます。しかし、こういったケースというのは、成果を得ることが難しいというのが実情です。それは、ツールありきのシステム導入になりがちだからです。

 ツールありきのシステム導入とは、デジタル化が目的化してしまっているということです。AIやブロックチェーンを始めとしたツールというのは、あくまでも手段、道具であって、目的ではありません。しかし、特に上場しているような会社では、DXを進めることが株主を始めとしたステークホルダーから求められているようなケースもあります。このようなケースでは、何とかしてAIやブロックチェーンを使いこなしている会社だということを訴求したいという事情も垣間見えます。また、単純にデジタル化して業績を伸ばしている他社の話を聞いて、自分たちもデジタル化したいというようなケースもあります。これらのようなケースで、ツールありきのシステム導入となる懸念が高いです。しかし、目的と手段をはき違えた取組というのは、絶対に失敗します。

■ツールありきのシステム導入からの脱却

 ツールありきのシステム導入から脱却するためには、どうすればよいのでしょうか?

 それには、「経営のWhy、What、How」を抑えることが大切となります。Whyとは会社のビジョン・志の事です。会社をどのような姿にもっていきたいのかという、方向性はどうしても必要です。向かいたい地点が無ければ、WhatやHowも存在しえないからです。ビジョンがあれば、どのように進むべきかという戦略が立てられます。これがWhatです。このときにはじめて、デジタルツールを活用した戦略を検討する余地が生まれてくるのです。

 そして、例えば、withコロナの状況への対応や生き残りをかけて、サービスをオンライン化するとか、あるいは、業務を省人化・自動化するというような戦略を立てたとします。この戦略を現実化していくために、オンラインビジネスの仕組みを作るとか、業務を可視化する方法を検討するとか、自動化のためにロボットを導入するということが、戦術・方法論であるHowということになります。

 ツールありきのシステム導入というのは、いきなりHowの話を始めてしまっているということなのです。だから失敗するのは当たり前なのです。このように、システム導入やデジタル化が成功する場合には、経営のWhy、What、Howに沿って検討が進められている必要があります。

 また、会社のデジタル化を進めるときに、Why、What、Howの観点に抜け漏れがないかということを確認するうえで参考になるのが、経産省が提示しているDX推進指標です(参考資料)。DX推進指標には、ビジョン、経営トップのコミットメント、仕組み、事業への落とし込み、ITシステム構築の枠組み等、Why、What、Howの観点が網羅的に含まれています。ですから、自社の取り組みがツールありきの取り組みなっていると感じる場合には、DX推進指標の項目を検討することで、何が不足しているのかが分かると思います。

 なお、弊社では、システム導入やプロセス改善に関するご相談を随時承っております。ツールありきのシステム導入になってしまっていると感じる場合や、プロセスの改善で困っている場合には、お気軽にお問合せいただければと思います。

<参考資料>

経済産業省.(2019). デジタル経営改革のための評価指標(「DX推進指標」). https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003.html

(第97回: 2020/8/26)