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■システムやサービスの切り替えにかかるリスク

 ご支援させていただいている人材派遣の企業の役員から「サービスの切り替えの際にどのようなリスクがあるのか教えてください」というご相談がありました。なんでも、システムの入れ替えを検討していたところ、他社サービスのプラットフォームを使わせてもらう方向で話が進んでいるそうです。解決を迫られていた課題も解消し、且つオペレーションもかなり効率化できるようで、良いことづくめです。

 しかし、よくよくお話を聞いてみると、他社サービスのプラットフォームを使用するというのは、かなり抜本的なサービス変更になることが分かりました。一人、二人で回している零細企業ではなく、会員数も数万人もいるサービスを運営していますので、やはり不安に感じられて、サービス切り替えに関するリスクを明らかにしたいというお気持ちは良く分かりますし、至極まっとうなご相談だと思います。

 システムやサービスの切り替えのような、会社の広範囲におよぶ取り組みのリスクを洗い出すときにやってしまいがち手法が、項目をボトムアップに洗い出していくということです。つまり、サービス切り替えにおいて、発生しそうな問題を一つ一つ列挙していくという方法です。

 このボトムアップ的なリスク洗い出しの問題点は、大切な観点が抜け落ちる可能性が高くなるという点です。特に、特定のメンバーだけで、リスクの洗い出しをしていると、各メンバーのフィルターを通したリスクしか見つけることが出来なくなってしまいます。ですから、抜け落ちているリスクに気づくのは、実際にサービス切り替え後に問題が起こった後というような事態になってしまうのです。

■切り替えリスクはフレームワークで洗い出す

 では、どのようにすれば、システムやサービスの切り替えのような会社全体に影響する取り組みのリスクを抜け漏れなく洗い出すことができるのでしょうか?

 答えは、フレームワークを活用するということです。フレームワークとは、色々な会社の事例に基づいて創り出された思考の型のようなものです。有名なものでは、3C、5フォース、PDCAといったものがあります。フレームワークを活用することで、特定メンバーの検討では抜け落ちていた観点により素早く気づくことが出来ます。

 確かに、フレームワークには、枠組みを超えた新しい発想が出来ないという欠点もあります。しかし、リスク洗い出しのような守りの検討には、ものすごく創造的な着想ではなく、検討の抜け漏れがないことが求められます。そのようなときに、フレームワークは素早く答えにたどり着く強力なツールになります。

 システムやサービスの切り替えにおいては、PPT(People, Process, Technology)のようなフレームワークが適しているでしょう。Peopleとは人・組織・教育、Processとは業務プロセス・コンプライアンス、Technologyとはシステム品質・データ移行・システム運用などの観点です。大きなレイヤーから細分化していくことで、抜け漏れが発生する可能性が低くなります。

 また、個人・個人で洗い出した観点をフレームワークの観点に当てはめていき、フレームワークに含まれていない観点があれば、逆にフレームワークに追加すればより、リスクの抜け漏れが発生する可能性は低くなります。そして、リスクを洗い出した後には、実際にそのリスクが起こった場合に、どのような対応をすべきなのかという対策を考えておくことで、実際に問題が起こった場合の対処もしやすくなります。それだけでなく、洗い出したリスク項目に基づいて、切り替えを実際に行うか否かの判定基準を作っておくことで、切り替えをするか否かの判断や、切り替えた後に問題が発生した場合のサービスの切り戻しの判断というものも、慌てずに行うことが出来るようになります。

 以上のように、システムやサービスのような会社全体に影響する取り組みのリスクの洗い出しとその対策を検討する際には、フレームワークを活用するということが、抜けもれなく、素早くリスクを洗い出すために有効な手段となります。

(第67回: 2020/1/22)