中小企業の残業規制への対応の3つのポイント
■残業規制のメリット・デメリット
ご支援させていただいている企業の方から、「中小企業において残業規制はありがたい面もありますが、マネジメントとっては大変な面もあります」との訴えをいただきました。つまり、20年4月から開始される中小企業の残業規制には、中小企業にとって、メリットもあれば、デメリットもあるということなのです。
まず、メリットは何といっても、残業規制があるため、会社の残業時間を強制的に減らすことが出来ることです。そのことで、長時間労働による従業員の疲弊を防ぐことができます。また、短い労働時間で同じだけの成果を出さないといけませんので、会社の生産性を高める取り組みを進めやすくなります。これは、残業規制という必要に迫られることで、労働生産性向上を行わざる得ない状況になっているからです。
他方、残業規制にはデメリットもあります。一つは、裁量労働制となっているマネジメント層に仕事が集まってくるために、マネジメントが疲弊する懸念があるということです。つまり、残業規制の対象である、担当者レベルが残業して行っていた仕事をマネジメント層が代替してしまっているケースでは、仕事がマネジメント層に偏ってしまうということです。
そして、もう一つのデメリットがあります。残業規制をしたうえで、同じだけの成果を出し続けるためには、必ず労働生産性を高める業務効率化が必要なります。しかし、マジメントに仕事が偏ってしまっている場合に特に当てはまることですが、業務効率化を推進しなくてはならないマネジメントが業務効率化に取り組む余裕がなく、業務効率化が一向に進まないという事態が起こりがちです。更に、それまで、従業員の長時間労働を前提としてきた会社にとっては、業務効率化を進めるという経験自体が少なく、そもそも取り組むことが難しいという側面もあります。
■残業を減らす際のポイント
では、残業時間を減らすべく、業務効率化を推進するためには、何をどのように行えば良いのでしょうか?
ポイントは下記の3つです。
・業務の可視化
・課題の洗い出し
・優先順位の決定
①業務の可視化
まず、残業を減らすために業務を可視化する必要があります。業務の可視化には二つのレベルがあります。一つは、会社全体を俯瞰して、現時点でどこが最も業務効率性が低く、長時間労働となっているのかという、凡その目星をつけることです。別の言い方をすると、検討の対象範囲を凡そ決めるということです。この時に、何をすれば残業時間を減らせそうかという仮説を持っておくと、更にその後の検討がスムースになります。
もう一つの業務の可視化とは、検討対象とした業務プロセスを詳細レベルで可視化するということです。具体的には、業務フローを作成することです。
②課題の洗い出し
業務を可視化することで、自ずと課題が明らかになります。また、凡そ立てていた仮説も正しいのかの否かが明らかとなります。業務フローを作って、業務を可視化してみることで、自分たちの業務プロセスにおいて、思いもよらず無駄なことをしていたということが見えてくるからです。
③優先順位の決定
課題と施策を明らかにして、列挙した後は、重要度と難易度をはかりにかけて、優先順位を決めることが重要です。この時にお勧めなのは、難易度が低く、すぐに効果が出そうな取り組みを試しに行ってみるということです。すぐに効果がでるクイックヒットと呼ばれる施策を実行して、実際に効果が出ることで、次の取り組みに対しても、前向きに取り組もうという雰囲気が醸成されます。このことが、更なる改善に向けた後押しとなっていきます。
以上のように、残業規制には、メリット・デメリット双方あります。その中で、デメリットである業務効率化の実現の難しさという壁を超えるためには、「業務の可視化」、「課題の洗い出し」、「優先順位の決定」という3つのポイントを押さえることが大切です。
(第66回: 2020/1/15)