10年後の経営環境から逆算して見えてくる打ち手
■2年後、3年後の緻密な計画の難しさ
色々な業界において、会社の2年後、3年後までを見据えた緻密な事業計画を策定することが、とても難しくなってきています。それは、市場や競合の変化が早くなっており、1年前に当たり前とされていた前提に基づいて作られた事業計画が現状にそぐわなくなるからです。
市場や競合の変化を早めている大きな要因の一つはインターネットを始めとしたテクノロジーの影響であることは明らかです。
特に、B to Cのビジネスでは、TV広告からインターネット広告、SNS広告、動画広告と集客できる広告メディアが目まぐるしく変わります。1年前までは、通用していたメディアで、あまり集客できなくなったということも頻繁に起こりえます。
また、2019年1月時点ではスマートフォンがモバイル・デバイスの中心となっていますが、スマートフォンが主流でなくなる状況は確実にやってきます。その状況に合わせて、部品メーカーは、主力製品をタイムリーに切り替えていく必要もあります。
このように2年、3年後の事業計画を精緻に作って、経営を行っていくことがともて難しい時代になってきています。
そして、小さくトライアンドエラーを繰り返しながら、短いスパンで事業の方向転換を図れることが求められています。
■確実性が高い10年後の未来
一方、矛盾するようですが、10年、20年後に確実に実現していそうな経営の未来の姿もあります。
一つは、一つの会社に一生勤める終身雇用制度がどんどん通用しなくなる時代の中で、若い社員であればあるほど、その傾向は強くなりますが、一つの組織に長く勤めるということが期待できなくなっていきます。
会社は、そのことを念頭に組織を運営していく必要があります。つまり、ひと昔前のように、残業を厭わない個々人の働きに依拠しているような経営スタイルが成立しづらくなるということです。
もう一つは、会社の諸々の機能を代替してくれるような、外部の仕組みやテクノロジーが発展していきます。
外部の仕組みとは、例えば、クラウドワーキングのように、デザインやプログラムのような仕事を外部のエキスパートに簡単に依頼することが可能なサービスのことです。
また、社外取締役やコンサルタントのようなプロフェッショナル人材を活用することができるようなサービスも、外部の仕組みの一つ言えます。
更に、AIやIoTのようなテクノロジーが発展することによって、多くの仕事が代替されるようになります。
このような状況を踏まえていくと、未来の会社の姿は、経営者のビジョンを現実化していくために、これまでのように多くの人を会社に雇うということを主眼に置かずに、外部の仕組みを活用しながら、ロボットやAIができる仕事はテクノロジーが代替していくというような姿になっていくのではないでしょうか?
そして、会社の中で人が行うべき仕事は、テクノロジーでは代替できない、創造性とコミュニケーションが必要な仕事に絞られていき、多くの人がフリーランス化していきます。また、働く側もいくつもの会社を掛け持ちしするというような働き方になるのではないでしょうか。
少し極端に思われるかもしれませんが、10年後、20年後の未来の会社の姿の方向性として、大きく間違ってはいないと思うのです。
■今打つべき打ち手
このような未来の会社の姿に移行していくために、今会社が準備すべきことはなんでしょうか?
その土台となるのが、経営者や経営幹部がしっかりと戦略や重要な意思決定に時間をさけるように、今いる社員で業務が効率的・自動的に回るような仕組みを作り上げておくことです。
そのような仕組みが出来上がっていれば、どのような業務を外部の仕組みに移管していけるのか、どのような業務をテクノロジーで代替できるのか、どのような業務を従業員に任せる必要があるのかということがはっきりと見えるようになります。
ぜひ、10年後の会社の屋台骨になるような仕組みを会社に作り上げることを検討されてみてはいかがでしょうか。
(第17回: 2019/2/6)