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■他社情報の位置づけ

 ご支援先企業から、「他社はどのように行っているのでしょうか?」というご質問をいただきました。とても良くあるご質問の一つです。今回のケースは、社員からパート社員へと仕事を移管することで、会社全体として労働時間を平準化し、残業時間を削減するという取り組みでした。その過程で、社内の業務プロセスを可視化してみると、上長承認のプロセスを紙で行っていることが、業務を非効率にしているということが分かってきました。そのため、承認プロセスを含めた電子化、ペーパーレス化を進めたいというご意向が強くなってきました。そして、ペーパーレス化の仕方について、他社のやり方を参考したいということで、冒頭のご質問になったという流れです。

 確かに、ペーパーレス化をしている会社は出てきていますが、他社の事例を知ったからといって、業務効率化ができるかというと必ずしも、そうではないのです。まず、他社の事例を自社に適用できるケースというのは極めてまれです。会社の規模や業種が異なる場合、ほぼ参考にならないと思った方が良いでしょう。万が一、規模や業種が同じ事例があったとしても、自社に適した事例かどうかは分かりません。というよりも、他社を参考しようと考えている時点で、自社の業務をどのように変えていきたいのかという、あるべき姿を描けていないことが多いです。そのような状態で、適した事例かどうかを判断することは極めて難しいといえます。

 また、仮に自社が目指すべき姿が明確になっており、それに適した事例があったとして、それを導入する際に、業務プロセスの可視化や見直し、そして、教育等が必要になります。その実行は誰がどのように行うのでしょうか。

 確かに、体力がある大企業であれば、競合他社の動向は、一般メディアを通じて手に入ることが多く、他社をベンチマークして、経営改革をすすめていくこということは実際に行われています。しかし、中堅・中小企業にとっては、自社の目指すべき姿に合致するベンチマークを探し出すこと自体が非常に困難です。なぜならば、規模、業種、地域、成熟度等において非常にバラツキが大きいためです。そして、仮に自社に適するベンチマークを見つけたとしても、それを導入するには、一定の障壁が発生します。

■他社情報の意味とは?

 では、どのようにすれば他社情報を有効に活用できるのでしょうか?

 中堅・中小企業が他社情報を活用する意味は、大きく三つに集約されるのではないでしょうか。一つ目は、自社の目指すべき姿を描くための参考にするという使い方です。テクノロジーを活用することによって、会社の業績を大きく伸ばせる可能性が高まっているのは事実です。しかし、何をどのように活用すれば良いのかわかないという会社も多いです。そのようなときに、似たような問題意識を持っている会社の事例を参考して、自社の目指すべき姿を描くことが出来るかもしれません。このとき注意しなくてはいけないのは、そのまま100%自社とマッチする事例というのは存在しないということです。そうではく、似たような事例から自社の問題を解決するためのエッセンスを参考するということが大切です。

 二つ目の使い方は、システム会社等を選定する際の候補とするということです。特に、自社と規模や業種が近い事例に関与したシステム会社が分かったならば、RFP(提案依頼書)を提示する候補会社の一社にするということも十分に考えられます。

 三つ目の他社情報の使い方は、導入の仕方における情報、例えば、導入に際して苦労した点や予想外であった点などを知れれば、自社が導入する際の留意点として活用することが可能になると思います。

 このように、経営変革をする際に他社情報を活用する余地というのは、実はかなり限られてくるのです。あるとすると、あくまでも参考にするという位置づけで上記三点が妥当なところではないでしょうか。

(第69回: 2020/2/5)