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■他社や他部門とのコミュニケーションの問題

 コンサルティングをさせていただいていると、コミュニケーションが原因で取り組みが行き詰まってしまうという場面を見かけることがあります。ビジョンや戦略は良いのですが、実行に移す段階で失敗してしまった、、、というようなケースにおいて、コミュニケーションの問題が原因となっているということは良くあります。

 そして、コミュニケーションの混乱は、他社や他部門との間においてよく起こるというのは、異論はないと思います。このようなとき、担当者は「あれだけ言っていたのに何故、こちらの言っていることを理解してくれないのでしょうか」と憤慨します。結果として、お互いに言った言わないの泥仕合になってしまうこともあります。ここまで来てしまうと、マネジメント、場合によっては経営トップが間に入って仲裁をする必要も出てきてしまうものです。場合によっては、経営トップが仲裁に入るころには時すでに遅しで、コミュニケーションのもつれが、感情のもつれになり、取り組みを断念する、もしくは大幅に遅らせるというような事態になってしまいます。

 他社や他部門とのコミュニケーションは何故ここまで難しいのでしょうか。。。それは、お互いの前提情報が異なるということを理解していないからです。特に日本人のコミュニケーションは、多くを語らなくてもお互いに察し合うことで成り立っている部分が大きいです。このことは、「空気を読む」という言葉に集約されます。この「空気を読む」型のコミュニケーションは、同僚や同じ部門内であれば、有効な場合が多いです。しかし、他社や他部門の人間に「空気を読む」ことを期待すると、とんでもないことになるのです。

 また、コミュニケーションが上手くいかなくなる原因として大きいものの一つが、手あたり次第に全てを伝えようとすることです。一度に多くを伝えても、相手を混乱させるだけで、適切な対応を促すことはできません。また、言った言わないという状態に陥りがちな原因が、コミュニケーションの手段が適切でないという場合もあります。例えば、大切な決定事項をメールや電話だけで終わらせようとすると、言った言わないという事態に陥りがちです。

■コミュニケーションを解きほぐすにはWhy, What, How

 では、コミュニケーションを混乱させないために、社員に対してどのように指導をしていけばよいのでしょうか?

 それには、Why、What、Howというフレームワークを意識するように指示をするということをお勧めします。

 Whyとは、背景や理由を相手に伝えるということです。他社や他部門の人というのは、自分たちが当たり前だと思っていることを当たり前だと思っていないのです。そして、自分たちの会社の方針や指示など相手は知るはずもないのです。ですから、自分たちの状況を他社や他部門の人に理解してもらうということがコミュニケーションの第一歩であることを理解させることが必要です。経営幹部であれば、他組織の人と頻繁にコミュニケーションをとる機会もあるのですが、従業員は同じ会社の同じ部署のメンバーとばかり話をしていることが多く、自分たちの状況をまず理解してもらう必要があるということを意外と理解できていないのです。

 Whatは、何を伝えるのか、ということです。更に言うと、優先順位をつけて、一度に相手に伝えることを絞り込む必要があるということを理解させる必要があります。多くても3つくらいまでにしないと論点がぼやけてしまうということは言えると思います。ですから、4つ以上伝えたいことがあっても、優先順位の高い3つに対する回答を得てから、次の機会に4つ目以降について伝えることが求められるということを理解させる必要があります。

 Howは、どのように伝えるのか、ということです。他社や他部門の人とのコミュニケーションで行き詰っているときには、極力、口約束ではなくて、文章化させるようにしてください。また、情報量が多くなる場合、メールだけでは埋もれしまいます。「あの時、メールに書いていたじゃないですか」と主張しても、メールを探すのも大変です。このような場合は、リスト化して相手と共有するなどの手段をとるようにさせてください。

 以上、他社や他部門とのコミュニケーションが上手くいっていない時には、部下に対して、Why、What、Howを意識させるようにしてみてはいかがでしょうか。

(第70回: 2020/2/12)