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■海外企業との協業のボトルネック

 今回は、目下急成長中のコンサルティング会社の幹部とのご面談での一コマです。勢いがある会社ということもあり、景気の良いお話を伺うことが出来ました。その中で「海外企業との協業のお手伝いをしてくれませんか」とのお話をいただきました。

 なんでも、金融業界において海外はでは広く使われているサービスがあるそうです。このサービスを日本に導入したいとのことなのですが、なかなか推進ができていないそうです。このコンサルティング会社、テクノロジー活用については、国内市場では素晴らしく成長をされています。しかし、英語が必要な案件を回せる人材が不足していることが足かせとなっているようです。

 確かに、Google翻訳をはじめとして、いくら翻訳技術が高まっているとはいえ、英語力がゼロで海外企業とアライアンスを進めるというのは、現状では難しいです。そのため、英語力がある程度あって、テクノロジー導入への知見がある人材がいないとテック系の海外企業との協業が進まないとの言うのは良く分かります。

 そのような人材を見つけるのは大変だと思われるかもしれません。しかし、実のところ、海外企業と協業を進める上で、英語力というのは、そこまで高いレベルを要求されているわけではないことが多いです。もちろん、場合によっては、ネイティブと同じくらいのレベルで話せることを求められることもあるかもしれませんが、多くの場合はそこまで高い英語力は必要ないことが多いのです。

 理由は、グローバルのビジネスでの共通言語は英語です。ですから、英語が母国語ではない人々が英語を使うというのは珍しいことではなく、少しくらい妙な英語を使っていても相手も慣れているので多めに見てくれる場合が多いでのです。しかし、多少の英語力があれば、日本企業とまるっきり同じ感覚で海外企業との協業を進めることが出来るのかと言えばそこまで簡単な話ではありません。

■海外企業との協業は「戦略的な思考」が大切

 では、海外企業と協業を進めるうえで、必要なポイントは何でしょうか?

 それは、「戦略的な思考」です。ここでいう戦略はとは、経営学上の経営戦略の事ではありません。海外企業との協業を進める上での戦略とは、読んで字のごく「戦いを略する」ということです。つまり、最小のコミュニケーションで最大の成果を上げるという思考が求めれるのです。

 相手が日本企業であれば、多少の認識の齟齬があっても、電話や対面のコミュニケーションでいくらでもフォローアップができます。しかし、海外企業とのコミュニケーションでは、一度ボタンを掛け違えると修復することが困難になってしまうのです。そもそも、物理的に対面のコミュケーションをとることが難しいですし、時差がある場合には、電話でのコミュケーションも自由には行えません。このような意味で、海外企業とのコミュニケーションというのは、難しいというのは確かです。

 しかし、グローバルの企業というのは、お互いに利益になるということが、明確に理解が出来れば、驚くほどスムースに合意ができるという側面もあります。ですから、徹底的に「戦い略して」最大限の効果を得るという「戦略的な思考」を持つことが求めれるのです。

 例えば、AとBという選択肢があって、自分たちはAで進めたいとします。この場合、Aという選択肢になれば、相手企業がどれほど多くのメリットがあるのかを十分にアピールしていきます。また、Bという選択肢を相手からごり押しされた場合には、どういう条件であれば、Bを受け入れることが出来るのか、また、妥協できないポイントは何かを前もって自社の中で合意しておくことが必要です。

 つまり、海外企業との協業における、「戦略的な思考」とは、コミュニケーションを図る前に徹底的にシミュレーションをして、撤退も含めてどのようなケースになっても「自社が負けることがない準備をしておく」ことだと言い換えることができます。

(第62回: 2019/12/18)