DAGMARの理論
■DAGMARの理論とは?
DAGMARは、Defining Advertising Goals for Measured Advertising Resultsの頭文字をとったもので、広告評価のための目標設定のためのフレームワークです。
まず、広告効果が発現するプロセスを「広告を見て知って、内容を理解して、買う気持ちになって、行動を起こすという」という、「知名」→「理解」→「確信」→「行動」の4つの段階に分けています。
そのうえで、各々の段階において、「知名率」、「理解率」、「確信率」、「行動率」を事前の調査で算出し、その数値をベンチマークにして広告効果の目標を設定します。
そして、広告を実施した後に、これらの数値がどのように変わったかをモニタリングして、効果を算出します。
DAGMARの理論が優れている点は、広告の効果を売上ではなく、コミュニケーションに限定したことだと言われています。
実際の売上は、マーケティング・ミックス(4Pであれば、商品・価格・チャネル・プロモーション)の組み合わせによって変動するもので、広告の効果のみの影響ではないという考え方が、この理論の背景にあります。
ただし、DAGMARのデメリットとして、必ずしも消費者が「知名」→「理解」→「確信」→「行動」の順番で商品を購入するわけではなく、広告効果の測定指標として必ずしも適当ではないということがあげられます。
この批判に関しては、店頭に並んでいる商品を見て、思いつきで購入することもあれば、インターネットでキュレーターのクチコミで購入する場合もあることを考えると、その通りだなと思います。
■DAGMAR理論の発展系
DAGMARの理論のデメリットを乗り越えるための考え方として、下記3つの要素を組み合わせた4つのモデルがあります。
<3つの要素>
学習・・・製品の名称や内容を理解すること
感情・・・製品に良い印象を持つことや、購入しようと思うこと
行動・・・製品を購入することやそれに結びつく行動をとること
<4つのモデル>
①学習モデル(学習→感情→行動)
・製品を知って内容を理解して、購入したいと感じて、購入に至るモデルで、DAGMARの理論と基本的に同じ構造です。
・薬品、PC、住宅等
②不協和—帰属理論モデル(行動→感情→学習)
・まず実際に購入してみて、その製品が気に入り、自分の選択が間違っていなかったことを確かめるために学習するモデルです。
・カメラ、自動車等
③低関与モデル(学習→行動→感情)
・製品のことはあらかじめ知っていて、実際に購入して使ってみて、気に入るモデルです。
・日用品全般(歯ブラシ、石鹸等)
④感情モデル(感情→学習→行動)
・感情が先行して、製品を知ろうとして、購入にいたるモデルです。
・化粧品、ブランド物の衣類、オートバイ等
■まとめ
以上のように、DAGMARの理論により、広告の効果測定を製品の売上から切り離し、コミュニケーションに特化することできるようになりました。
しかし、必ずしも消費者が「知名」→「理解」→「確信」→「行動」の順番で製品購入に至るわけではないことから、以下のようなモデルが作られていきました。
①学習モデル(学習→感情→行動)
②不協和—帰属理論モデル(行動→感情→学習)
③低関与モデル(学習→行動→感情)
④感情モデル(感情→学習→行動)
これらのモデルは、広告測定だけでなく、製品を売り出していこうとする際のプロモーションの仕方を検討するときも参考となると思います。
例えば、②不協和—帰属理論モデル(行動→感情→学習)に該当する、カメラや音響設備のような製品であれば、製品購入後のアフターサービスや、充実した情報提供が購入後の消費者の学習しやすさを支援することになるかもしれません。そのことにより、良い口コミを誘発して、製品の認知・売上に貢献することも考えられるのではないでしょうか。
他方、③低関与モデル(学習→行動→感情)に該当する日用品であれば、アフターサービスなどよりも、広告に注力して製品の名称などを知ってもらった方が良いということが言えるかもしれません。
このように、提供しようとする製品・サービスにより、広告やプロモーションの仕方が変わってくるということを把握する意味でもこれらのモデルは参考になるのではないでしょうか。
[参考文献]
梶山皓. (2007). 広告入門 第5版. 日本経済新聞出版社.