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返報性(へんぽうせい)のルール

返報性とは、「影響力の武器」という書籍で述べられており、比較的に広く認知されている用語です。返報性のルールとは、「他人がこちらに何らかの恩恵を施したら、似たような形でそのお返しをしなくてならない」というものです。
人間の精神はかなりの部分を潜在意識に占められており、無意識に働きかけられると意外と考えや判断をコントロールされやすいものだと思います。この返報性のルールも人間の無意識に働きかけコントロールするために多く使われているように思います。特にビジネスの現場では、仕掛ける側が返報性のルールを理解しているのかどうか別として、多く場面で利用されています。

例えば、スーパーの試食コーナーでは、少量ですが無料で食べ物を提供されます。この時、試食を食べた後に、その商品を買ってしまった経験はないでしょうか。これらは、実際に食べてみておいしかったからという理由だけで購入に至ったのではなく、返報性のルールに支配されている可能性も大いにあります。つまり、少しを小腹がすいているときに、少量でも試食を食べさせてもらって多少でも満足感を感じた時に、何かお返しをしなくてはならないと無意識に感じてしまっている可能性があるのです。
また、街頭で配っているティッシュも同じなよう効果があるのではないでしょうか。些細ではありますが、ティッシュを貰ってありがたいと感じることもあるでしょう。このとき、例えば不動産のチラシのみを配られた場合とティッシュに不動産のチラシが差し込まれている場合とでは、不動産屋へ連絡、もしくは訪問してくる人の数は変わってくるのでないでしょうか。

これらのケースで気を付けなければいけない点は、その人が本来欲しいと思っていなかったものを購入させられる可能性があるということです。購入者側から見ると本来必要ではなかったものを購入させられてしまうため、余計な出費が増えてしまうことになります。一方で、企業側からすると、無料で提供する試供品やティッシュはコストですが、その後に商品を購入してもらえれば十分に元をとれるという算段があり実施しているということになります。つまり、無料の試供品はプロモーション費用の一部であると考えることが出来るのです。

購入者であろうとも、経営者であろうとも重要なことは、返報性のルールを理解しておくことと考えます。購入者側であれば、ビジネスの一環において、無料で何かを貰ってしまうと何かを返さなくてはいけないと無意識で感じてしまうことを理解しておくことが重要で、そのことにより本当に自分にとって不要なものを購入することを避けることができるようになります。他方、経営者としては、返報性のルールを理解して販売促進を進めていくことも必要となるかもしれません。

[参考文献]
ロバート・B・チャルティーニ. (2007). 影響力の武器 [第二版]. 誠信書房.