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オープン・イノベーション

■オープン・イノベーションとは?
オープン・イノベーションは、カルフォルニア大学バークレー校のヘンリー・チェスブロウ氏が提唱した考え方です。

<クローズド・イノベーションの限界>
自社の技術・能力・資源に頼ったクローズド・イノベーションは競争優位性を生み出すことが難しくなってきています。QCD(品質、コスト、納期)とリスク管理の観点からクローズド・イノベーションの限界点を記してみたいと思います。

・品質(Quality)面: 自社技術に閉じているため、最新の技術や異なる分野の技術を活用した製品を開発することが困難
・コスト(Cost)面: 自社でゼロから開発しようするとR&D機能を保持する必要があり、人件費・設備投資等が発生
・納期(Delivery)面: 既に他社が先行している技術を自社でゼロから開発する必要がある場合、製品化まで時間を要す
・リスク面: 自社技術に拘ることによる競争優位性の毀損や、自社にR&D機能を抱えることによる人件費や設備投資が業績圧迫要因になる懸念

<オープン・イノベーションの必要性>
当然、分野によって必要性の多寡は変わってくるとは思いますが、これらのクローズド・イノベーションの限界とインターネット登場以降の技術変遷のスピードを考えると、他社の技術・能力を活用することで競争優位性を生み出すオープン・イノベーションの必要性が自ずと感じられるのではないでしょうか。

■オープン・イノベーションの例
オープン・イノベーションは比較的に抽象的な考え方のため、目的やビジネスモデルや企業の資源によって、形式が異なります。ここでは、3つの例について考えてみたいと思います。

①A&D(Acquisition and Development: 買収・開発)
ルーター等のネットワーク機器の世界的な大手企業であるシスコは、A&D方式のオープン・イノベーションで、成功しました。

A&D(Acquisition and Development)とは、自社内で研究所を保持するR&D(Research and Development)ではなく、必要な技術を持つ企業を買収し開発を迅速に進めていくことを意味しています。

A&Dによるオープン・イノベーションでは、普及・販売・開発という3つの要素がビジネスモデルの推進力となっています。

[普及] 技術を公開、もしくは安価にライセンス・アウトすることによる業界のデファクト・スタンダードを構築
[販売] 自社が構築したデファクト・スタンダードに従った商品の販売
[開発] 技術を保有するベンチャー企業を買収し、商品開発を迅速に推進

②コネクト+ディベロップ(Connect + Develop)
P&Gが2000年から開始した、コネクト+ディベロップ(Connect + Develop)は、自社の開発テーマをインターネット上でオープンにして、アイデアを広く募集するオープン・イノベーションです。

開発テーマという本来は企業秘密である情報を社外に公開してしまうというデメリットよりも、社外からアイデアを集めて素早く開発するメリットを優先させた判断といえます。

③ノンコア技術・製造のアウトソース
アップルのiPhoneやiPadには、「Designed by Apple in California(カリフォルニアにあるアップルによるデザイン)」という表記がパッケージに記されています。

これは、アップル製品にとってコアな要素であるユーザーインターフェイス等のデザインはアップルで行っていることを意味しているものです。

反対にそれ以外の機能や部品は、社外の企業にアウトソースしており、そのことにより、数か月という短期間で迅速に製品を開発することに成功しました。

■まとめ
上記の例にあげたオープン・イノベーションは、大企業の事例でしたが、スタートアップや中堅・中小企業であってもオープン・イノベーションは活用できるようになってきていると感じています。

それは、インターネットの登場によって、クラウドソーシング等社外のアイデアや技術を活用できる土台が整ってきているからです。インターネットの技術を活用することによって、大企業型オープン・イノベーションのエッセンスを取り入れる余地がないか考えてみても面白いかもしれません。

[参考文献]
三谷宏治. (2012). ビジネスモデル全史. ディスカヴァー・トエンティワン.