ブランドの階層
■ブランドの階層
ブランドとは、特定の製品・サービスだけに使われるものではなく、企業に対しても使われることがあります。参考文献においては、ブランドを5つの階層に分けています。5つの階層とは、①グループブランド、②コーポレートブランド、③事業ブランド、④カテゴリーブランド、⑤個別商品ブランドのことで、一つ一つについて考えてみましょう。
①グループブランド
グループブランドとは、企業群が有しているブランドのことです。多くは、歴史があるビックネームの企業群をイメージしていただければ良いかと思います。日本の旧財閥系の三菱、三井住友の他にもトヨタ、日立やGEなどがグループブランドを有していると言えるのではないでしょうか。複数の事業セグメントの企業をグループに内包しているようなコングロマリットで、且つグループとしてブランド力を有しているような企業群はグループブランドを保有しているといえそうです。
②コーポレートブランド
グループブランドに対してコーポレートブランドは、企業群ではなく一つの企業がブランドを確立しているようなケースです。例えば、コーヒーチェーンのスターバックスは、コーポレートブランドととらえることができます。また、変わったところではラーメン屋のラーメン次郎もコーポレートブランドを確立している例といえます。
③事業ブランド
企業の中の一つの事業に対するブランドのことで、事業部単位でブランドを確立している場合もあります。例えば、アップルの例で考えてみると、iPhoneはスマートフォン事業のブランドなのに対して、MacBookはノートPC事業のブランドとなっており、事業ごとにブランドが確立されています。
④カテゴリーブランド
製品のカテゴリーごとのブランドのことです。例えば、ビールを飲まれる方ならご存知かもしれませんが、アサヒスーパードライは、アサヒスーパードライ エクストラハードやアサヒスーパードライ エクストラゴール等の個別製品ブランドを束ねるカテゴリーブランドとなっています。同じように、化粧品やタバコなどにはカテゴリーブランドが作られているものが多いように思います。
⑤個別製品ブランド
個別の製品ごとのブランドを指します。④の例の通り、アサヒスーパードライがカテゴリーブランドなのに対して、アサヒスーパードライ エクストラハードやアサヒスーパードライ エクストラゴールが個別製品ブランドを指します。
これらの5つのブランドの階層はそれぞれ明確に分かれている場合ばかりではなく、各々の階層を跨っているようなケースもあります。例えば、コカ・コーラは、コーポレートブランドでもあり、事業ブランドもあり、カテゴリーブランドでもあり、個別商品ブランドと捉えることも可能です。
既にブランドが階層にまたがっているような企業において大切なことは、グループブランドから個別製品ブランドまでが一貫性を保っていることです。例えば、事業ブランドや個別製品ブランドが、コーポレートブランドのイメージから大きく逸脱していると、コーポレートブランドを毀損してしまいます。そのため、それらが整合性を保つように留意する必要があります。
また、これからブランド力を向上していこうという場合には、どのブランドの階層に対してアプローチをしようとしているのか、消費者・顧客は自社のどのブランドの階層に対してロイヤリティーを持っているのかということを把握し、製品・サービス開発やプロモーション・PR活動を行っていくことが有用になってくるのだと思います。
[参考文献]
安田貴志(著). (2007). マーケティングの仕組み. 日本能率協会マネジメント協会.