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価値連鎖(バリュー・チェーン)と活用方法

■価値連鎖(バリュー・チェーン) とは?
価値連鎖(バリュー・チェーン)とは、マイケル・E・ポーター教授が提唱している古典的なフレームワークです。

企業の活動の全体感を把握するために、バリュー・チェーンは有用な考え方です。

バリュー・チェーンの考え方の肝になってくるのは、企業の活動を抽象化して表すことです。

例えば、企業活動には、工場で一つの工程でネジを締めることや、営業担当者が企業訪問のためにアポイントを取ることも含まれます。

しかし、あまりにも個別具体的に且つ活動を捉えると、企業全体の活動を把握することが困難になります。

そこで、バリュー・チェーンでは、前者を製造、後者を販売・マーケティングという工程で捉え、企業活動の全体を把握することができるようにしています。

■典型的なバリュー・チェーンの例
バリュー・チェーンは業界・企業によって、個別に表されるものです。

ここでは、典型的な製造業のバリュー・チェーンの例を紹介してみたいと思います。

まず、この例では、企業活動を主活動と支援活動に大別しています。

主活動とは、企業が価値を生み出して、その価値を顧客に販売して対価を得る活動です。他方、支援活動は主活動を円滑に推進するために副次的に発生する活動です。

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<主活動>
購買活動: 製品製造のための原材料・部品の仕入れや保管
製造: 製品の製造、装置・設備のメンテナンス、検品
出荷活動: 製品の工場から倉庫・店舗への出荷
販売・マーケティング: 製品のマーケティング、及び販売
サービス: クレーム対応、販売後の導入支援、保守・運用サービス等のアフターサービス

<支援活動>
全般管理: 財務、総務、経営企画など企業活動全般の支援
人事・労務管理: 従業員の福利厚生、給与算定等の人事・労務管理
技術開発: 技術の設計・開発
調達活動: 社外からの物品・サービスの調達・購入のための契約業務

■バリュー・チェーンの活用方法
バリュー・チェーンの基本的な使い方は、企業活動の全体像をとらえることです。例えば、業務改善を議論する際に、企業活動のどこについてフォーカスを充てるのかというときにバリュー・チェーンを使用することができます。

また、同一業界の競合他社と比較する場合にも使用することが可能です。通常、同一業界あれば、バリュー・チェーンは似通ったものとなりますので、各プロセスの指標を比較分析することで、競合他社と比較してどこに強みと弱みがあるのかを明確することができるため、具体的な打ち手の検討が可能となります。

更に、バリュー・チェーンを分析・組み替えることによって、新規事業の検討・創出も可能となりますので、少し掘り下げてみてみましょう。

■バリュー・チェーン組み替えによる新規事業の創出
内田和成氏が著書(ゲーム・チェンジャーの競争戦略)の中で提唱されているバリュー・チェーンの組み替えの視点、①やめる、②強める、③混ぜる、④単純化するという4つに基づいて考えてみたいと思います。

①やめる
[内容]
・バリュー・チェーンの一部をやめることによって新しい価値を生み出します。
[例]
・IKEA: 家具製造・小売では、材料購入→部品製造→製品組み立て→出荷→販売というバリュー・チェーンとなっているところをIKEAは、製品組み立てのプロセスをやめて、消費者に組み立ててもらうスタイルを構築し、在庫スペースや物流費用の低減に成功

②強める
[内容]
・バリュー・チェーンの一部を強化することで新たな価値を生み出します。
[例]
・たまひよの写真スタジオ: 「乳幼児専門の写真館」として、乳幼児用の豊富な貸衣装や乳幼児が良い表情で写真に写るようなスキル・ノウハウを保持し、通常の写真館と差別化

③混ぜる
[内容]
・バリュー・チェーンに異業種や異業態の製品・サービスを混入させることで、魅力度をアップさせることを目指します。
[例]
・蔦谷書店: 書店にカフェや図書館を併設して、通常の書店とは異なる購入体験を提供

④単純化する
[内容]
・バリュー・チェーンの中で専門的で小規模のプロセスを単純化したうえで、事業規模を拡大させることを目指します。
[例]
・ファーストフード: 個人店においては、その店以外ではマネのできないような料理を出すことで他店との差別化をしようとするところを、ファーストフードにおいては、各店舗の調理をアルバイトでも調理できるように単純化し、素早く低価格で提供

■まとめ
以上のように、マイケル・ポーター氏が提唱したバリュー・チェーンは、企業活動の全体を捉えるうえで有用な考え方です。

また、企業活動の全体感を捉えるだけでなく、同一業界内の競合他社との比較や、バリュー・チェーンを組み替えることによる新規事業の創出等、非常に使い勝手のあるフレームワークだと思います。

[参考文献]
内田和成(編著). (2015). ゲーム・チェンジャーの競争戦略. 日本経済新聞出版社.