トップダウンと仕組化
■何度も繰り返し説明することの大切さ
先日、全国に店舗展開しているサービス業の社長が「お店のサービスの質を高めるために、店長やスパーバイザーはスタッフに厳しく指導をし、出来ていなければ繰り返し指示をしなくは駄目だ」と朝礼や事あるごとに叱咤激励しているシーンを見かけました。
素晴らしい、リーダーシップと情熱を持った社長のトップダウンの経営スタイルが、会社をこれまで成長させてきたことは紛れもない事実で、順調に店舗数を伸ばされています。
■強烈なトップダウンの限界はないのか?
しかし、会社がさらに成長をして、店舗数が増えてくると、必ず社長の目が届かない店舗が出てきはじめます。社長の目がどうしても届かない店舗が増えてきたときに、どのように会社をマネジメントしていくのでしょうか?
社長以外の経営幹部に同じような役割を担ってもらうことは出来るのでしょうか?
運良く、そのような優秀な経営幹部が育っていれば、もしくは外部から招へいできるならば、社長の目が届かいない店舗のマネジメントを一任することも可能なのかもしれません。
しかし、中小企業や中堅企業において、そのような人材が社内にいること、また社外で出会うことを期待するというのは、あまり現実的ではないのかもしれません。
また、仮に社長のトップダウンのスタイルを継続しながら、会社を成長させることが出来たとして、社長は新しい戦略や長期の取り組みなどの緊急性は高くないにもかかわらず、長期的には非常に重要な事柄に取り組む余裕は維持できるのでしょうか?
■会社を大きくするめに必要なことは何か?
では、社長の素晴らしいリーダーシップにより、トップダウンで伸ばしてきた会社を更に成長させるために必要なことは何でしょうか?
1つは、社長が繰り返し指示をしていることを明らかにして、その内容を標準化、ドキュメント化、仕組化していくことです。
そうすることで、社長の代わりに、今いる他の経営幹部が標準化された内容に準じて、組織を運営していくことが実際に可能となります。
こうした状況であれば、社長の代わりに陣頭指揮を執るような人材が見つからなくても、標準化された内容に準じたマネジメントを遂行できる人材を抜擢すればよく、社長の代わりを見つけるよりもはるかに現実的です。
そうすることで、社長は目の前の事業推進から解放されて、長期的により重要な事柄を考え、実行することも現実に可能になります。
ここで、間違えてはいけないことは、仕組化するということは、社長から権限移譲をするということではありません。最終的に事業の成長に責任を持てるのは社長以外におりません。権限移譲してしまうと、移譲された人材は、簡単に責任転嫁をしてしまう恐れがあるのです。結果として、単に生産性が落ち、事業が衰退するだけという目も当てられない結果を招いてしまいます。
この単なる権限移譲と社長が行っている一部の機能を仕組化するということは、似ているようで全く違うということを忘れないようにしてください。
単なる社長からの権限移譲は、責任転嫁を引き起こし、既存事業の生産性の低下を招きますが、社長の一部の機能の仕組化は、社長が今まで陣頭指揮に費やしていた労力を軽減させ、その上で意思決定や指示が適切に行えるようにするということなのです。
そうして初めて、社長に長期の戦略を検討する時間が生まれて、組織を更に拡大させる基礎ができるということになります。
「責任転嫁」と「仕組化」の違いについては、弊社主催のセミナーでも詳しくご説明しておりますので、組織運営で問題意識を持たれている社長、経営幹部の方はぜひご参加ください。
(第22回: 2019/3/13)