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業務改革おける”to be”と”to do”とは

■業務改革が行き詰まる根本的な理由

 これからの経営において、テクノロジーを活用しないという選択肢は、ほぼなくってきています。職人技で成り立っているような、伝統工芸の業界でさえもECを活用することによって、世界中にマーケティングができる時代です。そのようなことから、「RPA、AI、ブロックチェーンというような流行りのテクノロジーを使って何かプロジェクトが出来ないですか?」というようなお話は多くあります。

 しかし、テクノロジーの活用が目的化してしまった業務改革というものは高い確率で失敗してしまいます。理由は様々ですが、現場責任者が当事者意識を持たないために取り組みが浸透しないことや、テクノロジーを適用する領域がそもそも間違っていたというような場合があります。

 大企業であれば、広い意味でも投資の一環としてテクノロジー活用を推し進めており、直接的な投資対効果は二の次なので大した問題にはならい場合もあります。しかし、中堅・中小企業においては、限られた資源を用いて投資をするわけですから、「投資対効果が期待できなくても問題ありませんよ」とは、絶対にいえません。

 では、テクノロジーを活用した業務改革が失敗する根本的な原因はどこにあるのでしょうか?

 それは、次の言葉に集約されます。

 「”to be”というのは、”to do”というよりもはるかに重んずべきものぞ。」

 これは、かつての5,000円札の肖像にもなった、「武士道」を世界に紹介した新渡戸稲造氏の言葉です。意味は、「 ”どうありたい” ということを ”何をしたい” ということよりも優先させるべきだ」と言いうものです。経営に絡めて考えると、「”会社が目指すあるべき姿” というものを ”会社が目先でやろうとしている” ことよりも優先して考えるべきだ」ということです。

 つまり、テクノロジーありきの業務改革が失敗する理由は、”会社が目指そうしているあるべき姿”が全くのピンボケになっている状態で、テクノロジーの活用という”会社が目先でやろうとしている”ことに焦点を当ててしまっているから失敗するのです。

■業務改革を成功させる根本要素とは

 ここまでくれば、業務改革を成功させる根本要素が何かということが分かります。それは、社長が「会社の目指す姿を定める」ことです。ここで難しいのが、テクノロジーで何ができるのかが分からない状態で、テクノロジーを活用したあるべき姿を定めることです。

 このときにポイントなるのが、抽象から具体に押し込んでいくことです。例えば、利益体質の会社にするという抽象的な姿を描いたとしましょう。利益体質化させるためには、「売上のアップ」と「コストの削減」の方向性があります。「売上のアップ」を目指すならば、新規顧客を開拓するのか、既存顧客の再販を促すのかといった施策が考えられます。また、「コスト削減」であれば、原価、販管費、人件費等の削減を検討します。そのような観点で検討しく過程で、はじめてテクノロジーの活用を検討する余地が生まれていくるのです。そして、社員数は増やさないで、売上をアップさせるという施策を実現させるために、ITツールを活用した業務自動化が適用できるかもしれないという判断になるわけです。

 このような、検討がなされていない状態で、テクノロジーの活用から検討を始めてしまうと、何の効果も得られない結果に終わってしまうことになるのでうす。

 逆に、抽象的なゴールから具体な施策へ落とし込む検討がなされていれば、自ずと必要なソリューションが見えてくるはずです。弊社では、経営目標を抽象から具体へと落とし込み、地に足の着いた施策を推進していくお手伝いもしております。

(第53回: 2019/10/16)