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リモートワークの生産性向上のポイント

■リモートワークの実施状況

2021年1月に2回目の緊急事態宣言が出され、企業のリモートワーク実施率を7割まで上げるように要請が出されています。しかし、東京商工会議所の調査によると、リモートワークの実施率は2020年4-5月の67.3%から2020年9-10月の53.1%へと、14.2ポイント低下しています。つまり、1回目の緊急事態宣言時に一度リモートワークを取り入れたにも関わらず、数か月後にリモートワークをやめてしまった会社がかなりの数あったということになります。

出所:東京商工会議所(https://tosho-antenna.jp/entry/2020/11/12/100000

■リモートワークの阻害要因

 このように緊急事態宣言時に、一度リモートワークを実施したにもかかわらず、その後リモートワークをやめた企業があったのか掘り下げて考えてみたいと思います。こちらも東京商工会議所の調査となりますが、リモートワークを「一時期実施していたが、現在は取りやめた」232社のリモートワークを取りやめた理由は下記のようになっています。

 この表の中のCPTは筆者が付け加えたもので、原因を分類するカテゴリーとなっています。CTPとは、Customer(顧客)、Technology(技術)、およびProcess(プロセス)の頭文字です。

■リモートワークの生産性を高めるポイント

 CTPのカテゴリーごとに対策を考えていきたいと思います。

<Customer(顧客)の観点>

 まず、顧客や取引先とのコミュニケーションが原因でリモートワークが阻害されている場合、改善することは難しくなります。やはり、取引先が望めば基本は対面でのコミュニケーションが必要となります。ですから、顧客や取引先といった職種においては無理にリモートワークを適用しないことが妥当です。むしろ、リモートワークを実施する職種とそうでない職種を切り分けて対策を講じていくことが必要となります。

<Technology(技術)の観点>

 次にテクノロジーの観点では、PCやネットワークの整備などリモートワークを実施するために必須となるテクノロジーに投資ができるか否かがポイントとなります。また、テクノロジーとは少しずれますが、自宅の執務環境をいかに整えるかということも重要です。自宅のネットワーク環境や椅子やデスク等の執務環境を整えるということです。

これらのテクノロジーに対しては、今回のように緊急事態宣言の再発例や災害時の対応などを踏まえた事業の継続性を考えると投資するという判断が妥当かもしれません。また、リモートワークを実施することによる生産性向上などの投資対効果を鑑みて投資する・しないを判断することになるかもしれません。どちらにしても、リモートワークにかかるテクノロジーが阻害要因になる場合には、投資するか否かを意思決定することが必要になります。

<Process(プロセス)>

 リモートワークの阻害要因の最後の観点はプロセスです。つまり、リモートワークをすることによって、生産性が低下する主な原因となるプロセスに問題があるケースです。リモートワークが定着するか否かは、生産性をいかに高めることができるかにかかっています。そのためには、リモートワーク実施のためにプロセスを見直していくことが必要となります。

 このプロセスには、ミス防止のためのプロセスを作ることが必要かもしれません。オフィスに集まって、仕事をする場合、直接の声掛けでミスの抑止力につながります。しかし、リモートワークにおいては、細かなコミュニケーションができなくなりますので、リマインド機能を使うなど、ミス防止に向けたプロセスを構築していくことが必要となります。

 また、社員同士のコミュニケーションが希薄なることで孤独感やストレスを感じる社員もいるようです。ですから、状況に応じて週1回はオフィス出社して顔を合わせるなどして、社員同士のコミュニケーションを促進させる措置も必要になるかもしれません。さらにマネジメントの観点では、求めるアウトプットを部下に明確に伝えて、そして労働時間ではなくアウトプットで評価するように、指示・評価プロセスを作っていくことが求められます。

 以上のように、リモートワークの阻害要因は、CTP(Customer / Technology / Process)でカテゴライズすると、打ち手が明確になってきます。その中でも、Process(プロセス)を改善していく余地というのが比較的に多くなりますので、会社の状況に合わせて検討・対策を進めておくと、危機に強く高い生産性を持った会社へと変貌してくことができるかもしれません。

(第118回: 2021/1/20)