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■将来予測の難しさ

 現在は、半年先の事も分からないというほど、変化が激しく、5年どころか、1年先の経営計画さえも役に立たないと言われる方もいます。確かに、半年くらいのスパンで、臨機応変に舵をとる方が経営しやすい時代なのかもしれません。そのような中、2030年までのこれからの10年間を考えるというのは、至難の業だと言えます。

 昨年読んだ書籍の中で最も感銘を受けた本の1冊に「ファクトフルネス(参考文献参照)」があります。なんでも、オバマ前米国大統領やマイクロソフト社のビルゲイツ氏も推奨しているそうです。この本の秀逸なところは、過去の数十年単位のマクロデータを用いて、世の中が驚くほど、進化・発展しているということを看破している所です。

 「ファクトフルネス」を読むと、多くの人々は、世の中は悪くなっていくという悲観的な「思い込み」をしていることに気づかせくれます。そして、より正しい世界の認識を持たせてくれます。何故それができるのかというと、数十年というスパンのマクロデータを持ちいて分析しているからです。

 何をお伝えしたいのかというと、確かに、半年先、1年先の未来を正確に予測することは至難の業です。しかし、10年、20年スパンで考えると、このような世の中になりそうだなということは、ざっくりと分かるのではないかということです。

■2030年までの3潮流

 大きな視点で、世の中の流れを考えてみると、2030年までの10年間は、3つの潮流を抑えておく必要があります。それは、「①テクノロジーの発展」、「②グローバル化の進展」、「③人材の流動化」です。

①テクノロジーの発展

 テクノロジーの進展は、留まることを知りません。特にAIの発展は、これからの10年間でとても大きなインパクトを与えるはずです。現在のAIは、画像認識の技術による、医療診断、コンクリート診断、セキュリティー用の監視などおいて、注目されています。今後、AIとロボットが融合するロボティクスやAIが優しく触ることができることによって介護や家事ができるようになると言われています。更には、大規模な知識を学習できるようになると、秘書業務のようなホワイトカラーの仕事もAIに置き換えることが出来るとも言われています。また、AIだけでなく、直近では、5Gによる通信速度の飛躍的な向上、ドローンによる物流革新、量子コンピューターによるコンピューター性能の圧倒的な向上がなされるともいわれています。

 ですから、「テクノロジーが人の行っている業務を代替していくこと」や、「テクノロジーを使った新しいサービスが表れてくること」といった流れはますます加速化していくと予想できます。このことを積極的に経営に活かしていかない手はないのではないでしょうか。

②グローバル化の進展

 グローバル化については、ここ20年ほど指摘され続けていることです。2000年代までは、米国が世界経済を主導していましたが、2010年代に入って中国が台頭してきました。そして、2020年代は、東南アジアやインドも成長してきています。これも「ファクトフルネス」で指摘されていることですが、先進国と発展途上国という切り分けで世界の国々を論じることが出来なくなってきています。それは、東南アジア、インドのようなアジアの国々が、凄まじい勢いで中間層として発展してきているからです。そして、アジアは世界の人口の6割程度を占めています。日本市場では、既に飽和しているいるような製品でも、中間層の国々では消費量が膨大に増えていく可能性を秘めているのです。

 人口動態を考えたときに、間違いなく、今世紀はアジアが世界経済の中心になります。日本の会社がビジネスを考えるときに、この膨大な人口を有し成長が見込まれているアジア市場に位置しているメリットをどのように生かすのかということを考えるのは、決して無駄にならないと思います。

③人材の流動化

 トヨタ自動車の社長が終身雇用はもはや維持できないという主旨の発言をされました。日本の終身雇用を担ってきた代表格のような会社でさえも、人材の流動化は避けられないということなのでしょう。人材が流動化してきている理由は、実は、テクノロジーの発展とグローバル化とも関係しています。現在は、AIやIoTといったテクノロジー抜きで事業を考えることは出来ません。ですから、テクノロジーを活用してビジネスを推進できる人材はどの企業も喉から手が出るほど欲しい状況となっています。そして、グローバル化によって、多くの国々において教育レベルが上がっており、優秀な人材は国を跨いで仕事ができるようになってきています。このことが、人材の流動性を高める原因になってきています。

 つまり、終身雇用で誰にでも平等に賃金を支払うことでチームワークや和の精神で組織力を高めるよりも、ビジネスを大きく発展させることが出来る優秀な人材が必要な状況になってきていると言えます。ですから、雇う会社も雇われる側も、この流れを直視して、人材の活用や自身のキャリアを考えることが求められているのです。

 以上が、これから10年間で経営に影響しそうな3つの潮流です。3カ月先、半年先といった目の前の課題に取り組まれる一方で、時には視野を先に広げて、世の中が向かっている方向性について考え見ると何かしらの気づきがあるかもしれません。

(参考文献)
ハンス・ロスリング他, (2019), FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣. 日経BP.

(2020/1/1)