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中小企業が残業を減らす3つのポイント

■残業が少なくならない理由

 残業時間の規制に関しては、2019年4月から大企業で開始され、2020年4月から中小企業でも開始されています。月45時間、年360時間を超える残業は原則禁止となっています。違反すると、30万円以下の罰金もしくは、6カ月以下の懲役が科せられるとしています。大企業では、企業イメージや訴訟リスクもあることから、残業を減らす取り組みが進んでいます。しかし、中小企業においては、日本商工会議所の2020年2~3月の調査によると残業規制への対応が完了しているのは3割にとどまっているようです。

 中小企業において、残業規制対応が進まない理由は3点あります。1点目は、経営者が残業規制について認識していないということです。既出の日商の調査では、4月から残業規制の法律が施行されるにも関わらず、2月時点で約16%が「残業規制そのものを知らない」、「もしくは認識していない」と回答しています。2点目は、中小企業の労働環境の厳しさです。人手が足りないということと、大企業からの厳しい要求が中小企業の労働環境の悪化を招いています。大企業における、残業規制を始めとした働き方改革のしわ寄せが中小企業に来ているという事実も否めません。例えば、大企業のシステム導入のプロジェクトにおいて、孫請けの会社が仕事を請け負い長時間労働になってしまうということは、あり得る話です。3点目は、どのように残業時間を減らしていくべきか、その方法論が明らかでないということです。

 こうのように、中小企業が残業時間を減らすというのは、大企業よりも難易度が高いように思われます。しかし、月45時間、年360時間を超える残業をさせると、30万円以下の罰金もしくは、6カ月以下の懲役となります。また、今後は、中小企業においても訴訟リスクや企業イメージ低下を引き起こす懸念もあります。そのようなことから、中小企業においても、会社として残業を減らすことは優先度が高まっていくことが予想されます。

■残業を少なくするための3つのポイント

 中小企業において、残業を減らすには、何をすれば良いのでしょうか?

中小企業において、残業を減らすには、3つのポイントがあります。

①トップダウンの意思決定

 一つ目は、経営者の意思決定が必要です。やはり、中小企業の場合には、社長の意思決定が無くては、残業を減らすことは出来ません。残業を減らすためには、業務の抜本的な見直しが必要です。このような変革は、現場からボトムアップ的になされることはあり得ません。社長の「残業を減らすために、仕事を抜本的に見直そう」という号令が、残業を減らすための絶対条件となります。

②プロセスの改善

 次は、業務プロセスの改善が求められます。残業を減らすためには、残業が多くなっている人から、残業が少ない人へ仕事を移管することが有効です。例えば、支援先の例では、営業部の残業が他部と比較して多くなっていました。そのため、営業部の仕事を可視化・パターン化し、定型的な仕事を洗い出しました。そのうえで、定型的な業務をパート社員に移管しました。そのことで、営業部の残業時間が毎日1時間程度削減できるようになりました。このように、業務プロセスを見直すことで、残業時間の削減が実際に可能になります。

③業務のデジタル化

 また、定型的な業務については、デジタル化することも有効です。単純な、パソコン仕事をRPAやマクロに置き換えるということも有効です。また、紙とハンコによる承認作業をやめて、ペーパーレス化することで、省力化することも可能です。また、チャットボットなどを使うことで、省力化できる業務もあるでしょう。

 このように、中小企業において、残業時間を減らしていくためには、経営者によるトップダウンの意思決定が何よりも大切です。その上で、業務プロセスの可視化や標準化、そしてデジタル化を進めることが必要となります。

(第88回: 2020/6/17)