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属人化と業務自動化

属人化の良し悪し

先日、全国に100店舗以上チェーン展開をしているサービス業のCFOから「仕事が属人化していて困っているんですよ。」というお話を伺いました。

なんでも、品目ごとの原価を可視化して、店舗ごとに最適な原価管理をしたいそうなのですが、データがそろわなくて困っているとのことでした。

当然、そういったデータは、情報システムの中に入っていますので、データベースの中から抽出することになるのですが、この会社では、一人の担当者に任せっきりであったこともあり、品目や原価の管理が複雑になってしまっており、データが正しいのかどうかですら、検証ができない状態になっているとのことです。

また、そのデータベースを把握している担当者は一人だけですので、他の業務も兼務しており、CFOから作業を依頼しても対応するまでに時間がかかってしまうとのことです。

このように、作業が一人の人材や特定の組織に集中して蛸壷化してしまうのが、悪しき属人化の典型的な例です。

一方で、優れた経営者やマーケターが新商品を開発して、新しい事業やサービスを作っていくことも特定の人物に依存しているので、属人化しているといえます。

また、素晴らしいコミュニケーション能力を持った営業担当者が特定の顧客と深いつながりを持ち、大口の受注を続けているというようなことも属人化しているといえます。

これらの、経営者、マーケター、営業担当者の属人化は、良い属人化であると捉えること出来ます。

なぜならば、これらの仕事は、誰もができることではなく、適性があり、ある程度経験を積んできた人材でした対応することが困難だからです。

しかし、悪しき属人化の例で挙げた、システムやデータベースなどのケースは、データの持ち方を定義して、使いやすいシステムを作って、必要な人材に教育をすれば、属人化を回避することが実際に可能ですし、そうしなければなりません。

悪しき属人化が起こりがちな領域は、ITやシステムに関連した業務、経理周りの業務、契約書の管理等のドキュメント管理が発生するバックオフィスの業務、在庫管理 等が挙げられます。

業務自動化と属人化

これからの経営において益々重要となってくるのは、この良い属人化と悪しき属人化をしっかりと見極めることです。

なぜならば、悪しき属人化というのは、本当は誰でもができることを、特定の担当者しかできない状態にしてしまっており、組織力を弱めてしまうからです。そして、このような悪しき属人化が発生しやすい業務は、実は、仕組みやツールで業務自動化してくことができる領域でもあるのです。

一方で、良い属人化は、先にお話ししたように、多くの場合、自動化することは出来ません。なぜなら、良い属人化が必要な仕事の多くは、創造性や高度なコミュニケーションが必要で、AIやITツールに置き換えることが非常に困難だからです。

このように、属人化という視点で業務自動化を考えると、悪しき属人化が起こる領域を見極め、そのような業務を標準化、自動化していき、良い属人化が必要な領域に必要な人材を配置してくことが大切です。そのことを推し進めることで、他社との差別化につながっていきます。

(第21回: 2019/3/6)