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■脱ハンコを促すツール

 ペーパーレス化を実現する場合、脱ハンコを進めることは、非常に大切です。また、リモートワークの生産性を高めるためにも脱ハンコは有用です。先進的な事例は、GMOインターネットグループです。同社では、取引先との契約を電子契約に切り替えて、ハンコを完全に廃止することを目指すとしています。また、セイコーソリューションズは、2020年の夏をめどに中小企業向けの電子契約の支援サービスを始めるようです。費用も同社の大企業向けサービスでは、年間500万円からのところを中小企業向けに年間12万円からに抑えているようです。

 しかし、これらは先進的な事例であり、中小企業において、脱ハンコを進めるのは簡単な事ではありません。理由は、2つあります。一つは、中小企業の取引先が電子契約を取り入れていない場合、中小企業が率先して電子契約を推し進めることが困難だからです。先のGMOインターネットグループでは、電子契約を受け入れない取引先とは仕事をしないというくらいの姿勢で取り組みを進める気概を示しています。しかし、中小企業がそのような強気な姿勢をとることは簡単ではありません・・・

 もう一つ、中小企業において、脱ハンコが進まない理由は、「なんとなく」紙・ハンコ文化を変えることが出来ないということです。これは、ご支援先の担当者の方から「上長承認を得るためにハンコがいるので、ペーパーレス化できないんですよ」という声に表されています。このように、担当者レベルでは、脱ハンコをしたくでも、マネジメントレベルで脱ハンコの必要性を感じていない場合、取り組みは進みません。

■脱ハンコを考えるときの二つのポイント

 では、どのように脱ハンコを進めれば良いのでしょうか?

 脱ハンコを考えるときには、脱ハンコが進まない原因から分かるように、二つのポイントを抑えることが必要です。それは、「社外契約」と「社内承認」です。「社外契約」とは、他社との契約業務です。例えば、サービス提供の際のお客様との契約書を紙面で作成し、双方の社印をそれぞれ押印するようなケースです。

 「社内承認」とは、社内の承認業務です。例えば、顧客からの受注情報を紙面に印刷して、担当者がチェックしてハンコ、次に上長がチェックをしてハンコをするというような具合に社内の確認プロセスが紙とハンコでなされているような場合です。

 この2つのケースで脱ハンコの難易度が高いのはどちらでしょうか?

 いうまでもなく、「社外契約」です。お客様や取引先が紙面での契約を望めば、それに応じないということはなかなかできません。大切な取引先である場合には、無理に電子契約に置き換えることは当然現実的ではありません。

 一方で、「社内承認」については、今すぐにでも脱ハンコに切り変えるべきです。紙を印刷して、ハンコを押して、上長に提出して、確認してもらって、承認のハンコをもらってというプロセスは、紙も時間も無駄です。また、そのことで、リモートワークの推進が阻害されているとすると、通勤時間も無駄になるということです。

 「社内承認」の脱ハンコは費用もかからずに、推進することが出来るはずです。これを阻害している唯一の要因は、紙とハンコが無いと承認作業が進まないと考える思い込みにほかなりません。中堅・中小企業がこの壁を打破するためには、やはり社長や部門長の決断が必須です。社長が「社内承認」業務に関しては、脱ハンコをすると決断すれば進むはずです。

 今後、「社外契約」についても、電子契約に移行していく会社は増えていくと思います。ですから、「社外契約」も取引先の状況に合わせて徐々に電子契約を進めていくことになるのでしょう。このような事を見据えて、こと「社内承認」に関しては、いち早く脱ハンコすることをお勧めします。

(第87回: 2020/6/10)