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デジタル化とシステムインテグレーター(SI)

■SI企業の果たす役割とデメリット

 コロナ渦において、利用者を急拡大したZoomは、米国においては利用企業にサービスを直接販売する事業モデルとなっています。しかし、日本においては、システムインテグレーター(SI)企業に販売拡大を頼りました。

 また、2020年9月末の日経新聞の記事によると、日本のIT人材の77%はSI企業等のサービス提供側に所属しており、ユーザー側の企業に在籍しているのは、2割ほどとなっています。他方、米国においては、7割近くがユーザー側の企業に所属しています。このような状況になった原因は、情報システムの開発は繁忙期と閑散期の振れ幅が大きくなる傾向がある中で、日本においては雇用調整が難しく、IT人材をSI企業に集めざる得なかったという実情があったようです。

 このように日本では、システム導入において、SI企業の果たす役割が米国と比較しても大きくなっています。結果として、SI企業は顧客企業に深く食い込んでいるために、Zoomのようなソフトウェアサービス提供企業は、日本においては、SI企業を活用する販売戦略を選択しています。

 しかし、ここにきて、SI企業に頼りきりのデジタル化に限界も見えはじめてきています。これは、技術の進歩に伴って、SI企業との受発注の契約段階では想定できないないような課題が発生し、対応が困難になるようなケースが増えているからです。また、デジタル化を進めるためには、業務改革が必ず伴います。この業務改革の推進には社外のSI企業では限界があり、社内の業務に精通した人材が主導する必要があります。

 デジタル化を進めていくためには、このようなSI企業に頼り切りの状況から脱却して、SI企業との協業の仕方をしっかりと考えていく必要があります。

■SI企業との協業の仕方

 SI企業との協業の仕方には3つのポイントがあります。

①内製すべき業務の可視化

 一つ目のポイントは、デジタル化において、内製すべき業務は何かということを明らかにすることです。内製化が必要な業務とは、自社の優位性を高めるために、自社に蓄積するべき経験やナレッジがある業務です。例えば、デジタル化のロードマップの作成、IT戦略の立案、実行計画の策定、業務改革の実行、システム会社の選定、プロジェクトマネジメントといったスキルについては、自社に蓄積していくことが必要となります。このように、SI企業との協業体制を適正化するには、自社に蓄積すべき業務が何かを洗い出すことが第一歩となります。これは、同時にSI企業を含めた外部に委託すべき業務を明らかにすることと表裏一体となります。

②デジタル推進チームの組成/育成

 次に、内製すべき業務が明らかになった後には、推進チームを組成することが必要となります。これは、兼任でも専任でも問題ありませんが、新たに組織を立ち上げることをお勧めします。なぜならば、デジタル化は日常業務の延長線上にない取り組みですから、現状の肩書のままでは推進が困難なためです。例えば、営業部の担当者という肩書のままで、営業管理のシステム導入を推進するというのは、難しいものです。ですから、デジタル化の推進チームという組織を作り、そのメンバーがデジタル化を推進していくことが必要となります。

SI含めた外部機関の選定

 そして、自社で内製すべき業務と外部に委託すべき業務が明らかになり、自社内に推進チームが立ち上がったあとに、SI企業を含めた外部機関の選定を行います。この時点でRFP(提案依頼書)を作成して、外部機関を選定してくことも必要になるかもしれません。そして、外部機関を選定した後も、丸なげせずに、推進チームが主導して取り組みを進めることがデジタル化成功の大切なポイントなります。

 以上が、今後、技術の進展が予想される中で自社をデジタル化して競争優位性を高めるために、SI企業を含めた外部機関との協業をする上での成功ポイントとなります。

(第103回: 2020/10/7)