プロジェクトマネジメントとコミュニケーション
■プロジェクトが上手くいかない原因とは?
バックオフィスの効率化を進めているという会社の役員の方から、「プロジェクトマネジメントが上手くいかないんです」というお話を聞きました。
なんでも、バックオフィスの効率化のためにプロジェクトを発足させ、半年ほど前から業務の集約化を進めており、ゆくゆくはシステム導入までを進めていこうとしているとのことです。
比較的に大人数が関わるとプロジェクトということもあってか、プロジェクト全体のマネジメントが思うようにいっていないようです。
特に問題になっているポイントとして、2つ挙げられます。一つ目は、一つ一つの分科会が、全体のマスタスケジュールに則って活動できていないということです。もう一つは、分科会の中で発生した問題が、プロジェクトの責任者になかなか伝達されずに、責任者に問題が伝達される頃には、手の打ちようがないくらいに大きな問題になってしまっているということです。
実は、プロジェクトマネジメントの現場では、このような問題は非常に良く起こることなのです。何故こういう問題が起こるのでしょうか?
意外と思われるかもしれませんが、7割以上がとても単純なコミュニケーションの問題に起因しています。
コミュニケーションには、「タテ」と「ヨコ」のコミュニケーションがあります。「タテ」のコミュニケーションとは、上司と部下、プロジェクトリーダーとプロジェクト担当者のような上と下のコミュニケーションです。
一方、「ヨコ」のコミュニケーションとは、異なる部門間や異なる分科会で発生するコミュニケーションです。
「ヨコ」のコミュケーションが難しいというのは分かりやすいと思います。ですから、異なる部門や分科会で認識を合わせが必要な場合には、しっかりと対策を講じていることが多いです。しかし、プロジェクト運営において、より厄介なのが、「タテ」のコミュニケーション、つまり、下から上に情報が伝達されないことです。
プロジェクトの責任者からすると、何も問題がないと聞かされていたのですが、ある日突然、プロジェクト全体に影響する大きな問題が発生してくるのですから、大慌てすることになります。そして、「何故、もっと早く伝えてくれないんだ」とプロジェクトの責任者は疑問に感じることになります。
こういう事態が起こるのは、問題を上司に伝えなくてはならない担当者が、「事の重大性に気がついていない」か、「伝える事が億劫だから」という事が原因です。
「事の重大性に気がついていない」ケースでは、担当者は抱えている問題を分科会の中の話だと考え、自分たちだけで解決しようとします。しかし、その問題が実は、プロジェクト全体に影響するような大きな問題に発展する可能性があるということを理解していないのです。
また、「上司に伝えることが億劫」に感じるのは、悪いニュースを伝えるということが、非常に労力がかかるからです。同時に、問題を伝達すると自分の評価が下がるのでないかという不安にも駆られ、上司に伝えるよりも、自分で何とか解決しようとして、ずるずると傷口が広がっていくことになります。
■コミュニケーション促進の方法
プロジェクトマネジメントにおいて、上から下へのコミュニケーションが滞ってしまう問題を解決するには、2つの方向性があります。
1つは、コミュニケーションを促進させる風土を醸成することです。普段から挨拶の励行や飲みニケーションといった地道な活動を行っていきます。比較的に時間がかかってしまう方法であるため、即効性が求められるケースにおいては、あまり適しません。しかし、会社の風土を変えていくことになるため、継続的な効果が見込める手法であると言えます。
2つ目は、仕組みによる解決です。部門横断的な機能・組織を作って、その機能・組織に状況をウォッチさせて、報告させるというものです。即効性があるため、期限が迫っているプロジェクトを前に進めるためには有効な手段であると言えます。他方、部門横断的な機能・組織への人の配置が必要になってくる点は考慮が必要です。
以上のように、コミュニケーションを促進させようとする場合には、現在の状況や目指すべき姿に応じて、解決の方向性を検討することが必要となります。
(第41回: 2019/7/24)