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■新型コロナウイルスによって変わる人々の行動

 今回の新型コロナウイルスに関して、医学的な専門知識はありませんので、いつまで、現在のような感染拡大に備えた対応が続き、いつ収束するのかということは分かりません。しかし、東京オリンピックの延期や中国・ヨーロッパ・米国での感染の広がりを見ていると数週間程度で事態が完全収束するとは思えません。更に、飲食業界のように集客にダイレクトに影響を受ける業界も多く、経済的な失速期間も合わせると数か月から、場合によっては1年以上にわたってウイルスの影響を受け続ける可能性もあるのではないかと感じます。

 また、この1カ月程度で我々の行動パターンは大きく変化しました。そして、事態が長引けば長引くほど、行動パターンの変化が定着していくように感じます。そこで今回は、どのような変化が起こっているのかをマクロ分析のフレームワークであるPEST(政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、 技術(Technology))の観点で考えてみたいと思います。

政治(Politics): 感染抑制と経済保障のトレードオフ

 東京オリンピックは1年程度の延期が決定されまた。しかし、中国、ヨーロッパ、米国の感染の広がり方を見ていると、2020年7月の開催は、無理そうだということは、正式決定の2週間くらい前から、オリンピック門外漢でも分かりました。当然ながら、意思決定の中枢にいる関係者は理解していたはずです。しかし、最終決定にこれだけの時間がかかったということは、経済的な事情も含めた様々思惑を考慮する必要があったということではないでしょうか。

 感染抑制するためには、一定期間、都市封鎖(ロックダウン)して人の行き来を少なくすることが必要だという考え方もあります。実際に、中国、イギリス等ではロックダウンを行い、自宅から出ない措置をとっています。ロックダウンをすると当然ながら、経済活動がストップしますので、売上減少や倒産する会社がでて、路頭に迷う人も出てくるはずです。ですから、景気の悪化や経済面の保障も必要となってきます。

 つまり、何を言いたいのかというと、人命を守るために、ロックダウンのような強めの措置を行わざる得ない状況になった場合、物資や経済面でかなりの被害を受ける人たちが出てくる状況になります。このような経済面の被害を最小にするために日本政府も様々な保障を打ち出そうとしていますが、完全に全ての業種・企業をカバーしきることは困難だと思います。人命を守るために様々な業種・企業が荒波にさらされる懸念があるということは心に留めておく必要があります。

経済(Economy): 経済格差が拡大しつつ全体として大きく後退していく局面

 新型コロナウイルスは、密閉した空間で人の密集しているときにクラスターと呼ばれる、感染爆発が起こる可能性が高まることが分かっているようです。そのため、一つの場所に人が集まるようなイベントが開催できなくなり、シルクドソレイユは95%の人員カットを発表しています。飲食業の売上も落ちているところがあります。また、ホンダのような製造業でも北米工場を閉鎖するというケースも出てきています。このような状況が長引けば、当然ながら売上を大きく落とす企業が多くなり、景気は後退してくことになるのかもしれません。

 他方、マスクやトイレットペーパーは品切れ状態が続き、生産が追い付かないほどです。また、リモートワークを推進するようなテクノロジー会社やインターネット企業のように人と対面しないようなビジネスは、今回のコロナウイルスの影響をあまり受けずに業績を伸ばしていくように思われます。

 経済としては、全体としては大きく縮小しつつ、医療関連品や日用品に関わる企業やインターネット関連の企業は業績を伸ばすため、その意味で格差が更に際立つ時期が一定期間続くように思います。

社会(Society): 人はローカル、モノ・情報はグローバル

 コロナウイルスが広がる前の日本は、海外からのたくさんのインバウンドの観光客が来て、にぎわっておりました。しかし、例えば新宿のようなターミナル駅でも海外の人を見かける機会は大きく減ったように感じます。これは、各国が海外渡航制限をかけているためですが、国境を越えた移動だけでなく、東京への移動自粛要請など、国内の移動も制限されはじめています。このように、人はあまり遠出をすることができなくなっています。この状況がいつまで続くのかは分かりませんが、当面の間、自宅や地元で過ごす人が多くなるように感じます。

 一方で、家の中で人々が何をしているのかというと、スマホで動画をみたり、SNSを見たり、ゲームをしたりする時間が増えるのではないでしょうか。その中で、各国の感染状況のような情報が調べればすぐに手に入ります。また、マスクを中国から取り寄せたりもしています。

 このように、体はローカルな自宅や地元から動けませんが、一部のモノや情報は変わらずグローバルに飛び回っているように見えます。

技術(Technology): コミュケーション技術の重要性の高まり

 人の物理的な移動が制限され、時差出勤やリモートワーク、遠隔授業のような取り組みが広がり定着化してくように感じます。対面のコミュニケーションではなく、TV会議や動画などを介したコミュニケーションの重要性が高まり、それをサポートするテクノロジーが浸透していくことになると思います。

 スカイプやZoomを利用して、遠隔でミーティングやセミナーが当たり前のように行われるようになっています。また、更に進んでVRの技術などを利用して、より臨場感を高め、初対面でも会わなくても意思疎通ができるような流れにもなっていくかもしれません。また、医療現場においても、初診は遠隔で行うようというようなことも起こるかもしれません。

 対面ではない遠隔のコミュケーションを促進させる技術については、この数カ月で広く浸透していくように思いますし、また、人が対面で会う機会が減っていくと、人からの紹介やSNS等の評価によってあらかじめスクリーニングされたうえで、営業や商談が進められるケースが増えるのかもしれません。

■アフターコロナの世界

 経済の観点では、大嵐は避けられない状況だと思います。先週末(2020年3月28日)の安倍首相の会見においても、2008年のリーマンショック以上の経済対策を講じると述べています。つまり、リーマンショック以上の経済的なダメージがあることが明らかだということなのだと思います。政治として、経済対策を講じるとしてもやはり、大きな被害を受ける業種や企業は一定出てくるはずです。まずは、この大きな嵐を何とか切り抜けることに全身全霊を尽くすということが求められます。

 また、コロナウイルスによって、グローバルに人が行き来するということが出来なくなっています。対面で人が接する機会も減りつつあります。このような状態がいつまで続くのかは、分かりませんが、1年くらいはこのような状態が続く可能性もあると思っています。

 一方で、情報は国境や場所を超えて、情報空間を自在に飛び交います。このように、人はローカルに、情報やモノがグローバルに行きかう時代になっています。そのような中、遠隔でも、仕事やコミュニケーションができるように支援する技術や、対面でなくても臨場感を持って対話ができるような技術を活用してリモートでも経営活動ができる状態にシフトしていくことが求めれていくのではないでしょうか。

(第77回: 2020/4/1)