ブロックチェーン⑤(経営への影響(機会と脅威))
■ブロックチェーンの特徴
これまで、ブロックチェーンの技術面と応用可能なサービスについて、お話してきました。ブロックチェーンのまとめとして、ブロックチェーンの特徴と経営への影響(機会と脅威)について考えてみたいと思います。
まずブロックチェーンの特徴として、セキュリティー、分散管理、処理速度の3つの観点から考えてみたいと思います。
・セキュリティー
セキュリティーに関しては、ビットコイン・ブロックチェーンがその強固なセキュリティー性を証明しているのではないでしょうか。ビットコインは、パブリック型ですので不正行為を仕掛けようとすればいくらでも可能な状況下で10年間エコシステムが破壊されることなく、不正なデータ改ざんが行われていません。
つまり、ブロックチェーンはデータ改ざん等の不正行為を行うことが著しく困難な技術だということができるのではないでしょうか。
・分散管理
次に、ブロックチェーンは、中央集権的な管理者がいるわけでない、分散管理の仕組みをとっております。そのため、独立性が高い仕組みが必要なケース、例えば電子投票等に対して適用ニーズあるかもしれません。ただし、分散型とはいっても誰が誰に投票したというデータ自体は、すべて保存されておりますので悪用されないような仕組みとなるように工夫が必要であることは言うまでもありません。
・処理速度
処理速度は、ブロックチェーン③でお話したコンセンサス・アルゴリズム(PoW、PoS、PBFT等)によってかなり変わってきます。
ただし、一つ言えることは、人を介していた処理と比較するとプロセスの処理速度が格段に速くなるということです。例えば、土地の登記などにおいて、申込者が書類を作成して、窓口に提出して、承認して、証書を発行してというプロセスを人が介して行うと数日間要していたものが、ブロックチェーンを活用すれば1時間以内に完了してしまうというような検証実験もあります。
このように、ブロックチェーンには、セキュリティー、分散管理、処理速度の観点で優位と考えられる特徴を持っています。
■ブロックチェーンの経営への影響
では、最後にブロックチェーンの既存事業者への機会と脅威について考えてみたいと思います。
・既存事業者の機会
ブロックチェーンの④でお話した通り、ブロックチェーンは、仮想通貨だけでなく、金融分野、非金融分野に対して応用が試みられているというお話をしました。スマートコントラクトのように、紙面や人を介して何日も掛かっていた手続きを数分で終えることができるというように、既存の業務の電子化・自動化・時間短縮化を高いセキュリティー性と分散管理の仕組みで構築していくことができます。
そのため、既存事業者の経営陣は、大幅なコスト削減や業務効率性の向上を狙ってブロックチェーンの活用を試みていくことになると思います。
・既存事業者への脅威
次に、ブロックチェーンの既存事業者への脅威に関しては、情報の仲介業者は一気に職を奪われる可能性があります。例えば、不動産の仲介などについては、もしAIが投資家と物件のマッチングをして、契約手続きをブロックチェーンで代替することができたら、既存の仲介事業者の一部は、役目を終えることになるのかもしれません。
また、同様に企業の中で書類の手続きや仲介的な職務がブロックチェーンに置き換わられる可能性もあります。そのため、企業自体の業務効率性は高まりますが、その中で働いている従業員は今の職務がブロックチェーンに置き換わられる可能性もありますので、技術動向を見据えて準備をしておく必要があるのかもしれません。
以上、10年前にビットコインから始まったブロックチェーンは、仮想通貨を超えて、各分野に広がりを見せようとしています。現状は、ビットコインで騒がれていますが、実は他の分野で起こるインパクトの方がよほど大きいのではないかと感じています。
ブロックチェーン技術に着目して、ご自身の周りで起こることを想像しておくと変化への対応がスムーズになるのではないでしょうか。
[参考文献]
Satoshi Nakamoto. (2008). Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System.
https://bitcoin.org/bitcoin.pdf#search=%27Bitcoin%3A+A+PeertoPeer+Electronic+Cash+System%27
岸上順一, 藤村滋, 渡邊大喜, 大橋盛徳, 中平篤. (2017). ブロックチェーン技術入門. 森北出版株式会社
中島真志. (2017). アフター・ビットコイン. 新潮社
服部直樹.(2006). ブロックチェーンがもたらす金融ビジネスの革新. みずほ総合研究所.
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/us161121.pdf
(掲載: 2018/05/12)