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2030年までのAIの動向について(③ロボティクス)

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(引用)総務省「人口知能の未来 -ディープラーニングの先にあるもの」(2016,松尾豊)に基づいて作成

上記のロードマップにおける6つのカテゴリーの中の③ロボティクスについて「技術面の概要」、「産業化の可能性」、「産業化にあたっての考慮点」について考えてみたいと思います。

■技術面:環境変化にロバストな自律的行動
カテゴリーの①画像認識と②マルチモーダルな認識は主にAIの発展のうち認識面で起こる変化でした。③ロボティクスは、AIが運動面に切り込んでいくことを示しています。ロボットのような機械が環境変化にロバストな自律的行動ができるようになることで、これまで人の手でしかできないと思われたことがロボットに置き換わっていくことが期待されています。

なお、ロバストとは自然環境の変化などに融通が利くことで、機械学習の過程で敢えてノイズや障害を与えることで融通の利くAIが作られていくことが分かってきているそうです。小さな試練を乗り越えながら成長していく、人間の学習課程と似ていて興味深いところです。

■産業化の可能性
・自動運転:運転車がいなくとも自動車がセンサー情報や車載カメラの情報等から交通情報をリアルタイムで解析しながら安全に走行
・自動操縦:ドローン、小型運搬車、農機、建機の自動的な操縦 等
・農業の自動化:自動的に雑草を認識して除去するロボットや、果実の熟している度合を見ての収穫や選花等
・製造装置の効率化:産業用の組み立てロボットの効率化

■産業化にあたっての考慮点
2020年までに自動運転を目指しているという声も聞かれますが、何の制約もなしに運転手なしの自動車が公共道路を走るのは、なかなか難しい問題をはらんでいると思います。

なぜならば、人が運転するよりも事故を少なくすることは可能となるかもしれませんが、完全に無事故にすることは不可能です。だとすると、人を轢きそうな状況になった時に、車の中の人の安全を優先するのか、外の人の安全を優先するのかについてあらかじめ決めておく必要があると思われます。

たとえば、赤ちゃんが車に乗っていた場合に、小さな子供が赤信号で飛び出してきたら、車内の人を危険にさらしてまで急ブレーキを踏むべきか踏むべきでないかといったことは非常に難しい判断です。

このようなガイドラインについては、あらかじめ検討を重ねる必要があり、制限なしに自動運転の自動車が公道を走るのは予想よりも未来の話になるのかもしれません。

他方、農業用の工作機械や作業ロボットにAIが搭載されることについては、分野によっては、公道を走る自動運転車ほど、社会的・倫理的制約が小さい領域から、順次産業化されていくのかもしれません。

[参考資料]
松尾豊. 人口知能の未来 -ディープラーニングの先にあるもの. 総務省. http://www.soumu.go.jp/main_content/000400435.pdf
清水亮. (2016). よくわかる人工知能. KADOKAWA.