供給連鎖(サプライ・チェーン)とSCM
■サプライ・チェーンとは?
物の流れの基本である受発注と納品が、単一企業に閉じた状態ではなく、企業間を跨いで実施されている状態を供給連鎖(サプライ・チェーン)と呼んでいます。
具体的なイメージとして、例えば消費財業界のサプライ・チェーンは、以下のようになります。
製造メーカー → 卸売業者 → 小売業者 → 消費者
サプライ・チェーンは、何も手を加えないでおくと一つの問題が発生します。その問題とは、実際の消費者が示している需要よりも大きな出荷がなされてしまうというものです。
例えば、消費者が購入により小売業者の店舗在庫が無くなりそうなときに、卸売業者に発注を出します。この時に、小売業者は、店舗在庫が品切れになることを避けるために、実際の消費者の需要よりも少し多めに発注をします。
同じように、卸売業者も小売業者からの受注を受けて、製造メーカーに対して少し多めに発注をします。
結果として、製造メーカー、卸売業者、小売業者の間で、消費者が示している需要以上の在庫が発生することになってしまいます。
■SCMとは?
このサプライ・チェーンに発生する在庫が過大になってしまうという問題に対応するために、SCMが生まれました。
SCMとは、サプライ・チェーン・マネジメント(Supply Chain Management)の頭文字の略語で文字通り、サプライ・チェーンを管理するための考え方です。
顧客の実際の需要に即した製品補充と出荷がなされることを目指しており、顧客の需要・出荷動向に合わせた形でサプライ・チェーンの供給活動を管理していきます。
例えば、製造メーカーが卸売業者の出荷情報に基づいて、製品を製造・補充することがSCMにあたります。また、小売業者のPOS等の販売データに基づいて、卸売業者が出荷していくこともSCMにあたります。
例からわかるように、SCMにおいては、組織間・企業間で受発注を行うことを省略し、販売データや出荷データに基づいて、納品をしていくことを意味しています。
こうしたSCMを実現していくためには、サプライ・チェーンを構成する組織・企業間で情報を連携していくことが重要となり、SCMの実現のためには、ITシステムを活用することを切り離すことができません。
■まとめ
以上のように、供給連鎖(サプライ・チェーン)は受発注と納品という従来の物の流れが企業間を跨いで行われている状態を指します。
サプライ・チェーンは何も管理しない状態では、市場の需要と比較して、在庫過多の状態になっていきます。
SCMは、販売データや出荷情報が共有されることによって、受発注を介さずにより需要に即した製造や出荷がなされ、在庫が適正化されることを目指したものです。
SCMは、需要予測の精度向上に伴い、販売計画と生産計画を連動させ、より無駄が少ない形で需要に即した製造・出荷を実現しようとするS&OP(Sales and Operations Planning)等へも発展を続けています。
更に極端な例として、Amazonが行おうとしている、AIに消費者が購入しようとしている商品を予測させて、欲しいと思う商品が自動で届くようにするという考え方は、究極的にSCMが発展した形だと言えるのかもしれません。