組織構造を定義する六つの要素(⑤集権化および分権化)
組織構造を定義する六つの要素の中の、集権化および分散化について考えてみたいと思います。
①職務の専門化
②部門化
③指揮命令系統
④管理の範囲
⑤集権化および分権化
⑥公式化
■集権化および分散化とは
集権化された組織とは、トップマネジメントが意思決定の大部分を行い、下位レベルのマネージャーはトップマネジメントの指示に従うだけという状態です。ワンマン社長による、トップダウンの組織が集権化された組織の典型的な例です。集権的な組織では、現場レベルからの情報もトップマネジメントにあまり伝わらない状態で、トップマネジメントは意思決定をしていきます。
一方で、分散化された組織とは、現場に近いレベルのマネージャーに多くの意思決定が任されている組織です。更に現場レベルの情報がトップマネジメントに多く伝達され、それに基づいて意思決定をしていく組織です。
参考文献としてあげている「組織行動のマネジメント」においては、分散化された組織は、以下二つのメリットがあるとしています。
・より迅速に問題解決行動に移ることができる
・従業員が自分たちの職業生活に関わる意思決定から疎外されていると感じることが少なくなる
更に、大企業においては、より柔軟かつ素早い対応が求められている現在の環境において、組織はより分散化されてきているとしています。大企業のように階層化されている組織においては、現場に近いマネージャーの方が、顧客や外部環境の情報を豊富に持っているため、彼らが意思決定を下せるように、より分散化された組織の方が合理的であると言えます。
■中小企業における中央集権化と分散化
他方、創業されて間もない企業や中小企業は、集権的な組織である傾向が強いのではないでしょうか。これは、創業者・経営者が強いリーダーシップを持ち、組織を率いていかなくては、売上を伸ばすことも要員を採用することもままならず、集権的な組織にならざるをえないからです。
組織の分散化を検討していくのは、組織が標準的な業務プロセスを確立し、現場に近いマネージャーが自律的に活動できる素地が出来上がってからと言えるかもしれません。そのような状況になるまでは、創業者・経営者によるトップダウンによるマネジメントが必要です。
創業間もない企業・中小企業にとって重要なことは、闇雲に分散化することが良いのではなく、業種、社員数、組織の階層数、企業の成長フェーズによって、組織を集権化するのか、分散化するのかを見極めることが必要となってきます。
[参考文献]
スティーブン P. ロビンス (著), 高木 晴夫(訳) (2009). 組織行動のマネジメント. ダイヤモンド社.