サービス生産性改革①(必要性)
■サービス生産性改革とは
従来の生産性改革の取り組みで対象となることが多かったのは、トヨタ社のカイゼン活動、5S等や製造業に対するものでした。
サービス生産性改革では、医療、飲食等のサービス事業、及び人事、経理等のホワイトカラー業務の生産性の改革を目指したものです。
サービス生産性は、これまであまり手付かずであり、目立った取り組みが行われてきませんでした。
これは、サービス産業やホワイトカラーの業務が、製造業における不良品率のように分かりやすい指標で定量化することが難しかったため、手をつけづらい領域であったことが理由の一つと考えられます。
にもかかわらず、現在、サービス産業やホワイトカラーのサービス生産性改革が否応なく求められるようになってきているのはなぜでしょうか?
■サービス生産性改革が必要な理由
サービス生産性改革がかつてないほど求められている状況となっているのは、マクロな理由として大きく3つのことが考えられます。
①高齢化社会による生産年齢人口比率の低下
②終身雇用の崩壊による働き方の変化
③デジタル技術の発展による生産性向上の可能性
①少子高齢化社会による生産年齢人口比率の低下
少子高齢化によって、生産年齢人口の比率がますます少なくなっていきます。
総務省の調査によると65歳以上の人口は、2010年には23%でしたが、2060年予測では39.9%とこれまでどの国でも経験したことのない少子高齢化が進むとしています。
また、15〜64歳の生産年齢人口は2013年末では7,883万人まで減少しており、2060年予測では4,418万人と大幅に減少することが見込まれています。
このように、日本は少ない生産年齢人口で多くの高齢者人口を支えていかなくてはならない社会に急速に移行していっているのです。
つまり、個々の企業の生産性を圧倒的に高めていくことが求められており、手付かずであったサービス業やホワイトカラーのサービス生産性改革にもメスを入れる必要が生まれているのです。
②終身雇用の崩壊による働き方の変化
終身雇用制度が崩壊しつつあることも、サービス生産性改革の必要性を強めている要因となっています。
終身雇用制度が機能していた時代には、会社が一生面倒を見てくれるのだから何とか頑張ろうと、多少ブラックな働き方でも受け入れてしまうということがあったのかもしれません。
しかし、現在は長時間労働等の無茶な働き方を強要するとブラックな会社であるとのレッテルを張られ、益々人が集まらなくなり、企業の存続にかかわる事態となる可能性もあります。
そのため、サービス生産性を高めて労働時間を短くすることは、益々求められることになるでしょう。
③デジタル技術の発展による生産性向上の可能性
近年、IoTやAIの発展により、デジタルツールを活用した仕事の効率化がはかられています。
特に、単純作業をRPA(Robotic Process Automation)に置き換えることは、これまで手付かずであったホワイトカラーの生産性を劇的に高めていくことになるでしょう。
医療サービスの分野では画像認識による皮膚癌の診断などができるようになってきています。
また、Amazon社は、センサーを活用してコンビニエンスストアの無人化に取り組んでいます。
更に、自動運転やビックデータを活用したマーケティング等に影響を受ける分野も出てきています。
このように、デジタル技術の発展は、サービス産業やホワイトカラーの生産性を高めつつあり、このような動きに乗り遅れると他社から遅れをとっていくことになります。
そのため、機先を制して、デジタル技術を活用して生産性を高めるということが大切となります。
■まとめ
以上のように、①生産年齢人口比率の低下、②終身雇用の崩壊、③デジタル技術の発展の3つ要因からサービス業やホワイトカラーの仕事にも生産性の向上が益々求められる時代になってきています。
当ホームページでもサービス生産性に着目して、何をすべきなのか、どのようにすべきなのか、どのようなことに留意すれば良いのかということにまで踏み込んで情報を発信していきたいと思います。
[参考文献]
総務省. (2014). 平成26年版 情報通信白書のポイント. http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc141210.html
(2017/12/26 掲載)