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賃金体系

■賃金体系とは?
賃金体系とは、賃金がいかなる要素で構成されているか、それらがいかに組み合わされているか、各要素はいかなる基準で決定されるかということを意味しています。

下記イメージ図の通り、賃金体系の構成要素には、大きく①仕事基準型賃金と②人基準型賃金があります。

①仕事基準型賃金は、仕事に対してお金が支払われるもので、①-1. 能率給と①-2. 職務給に分けることができます。

②人基準型賃金は、人に対してお金が支払われるもので、②-1. 職能給と②-2. 年功給に分かれます。

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原資料:楠田丘.(1993).賃金テキスト(改訂第7版). 経営書院. P118.
出所:関本浩矢, 森田雅也, 竹林明, 上林憲雄, 奥林康司, 團泰雄. (2007). 経験から学ぶ 経営学入門. 有斐閣ブックス.より作成

これらの4つの賃金体系の構成要素について考えてみたいと思います。

①-1. 能率給(仕事基準型賃金)
能率給は仕事の成果やアウトプットに応じて給料が決められていきます。

<メリット>
・成果を出せば出すほど、賃金が支払われるため職場の刺激性が強まる可能性
・成果を出せない社員の人件費を低減できるため、経済合理性が強まる可能性

<デメリット>
・社員が成果を出すことに執着してしまい社員同士の協力関係が弱まり、組織の柔軟性・安定性が弱まる懸念

①-2. 職務給(仕事基準型賃金)
職務の価値があらかじめ決められて、その職務に対して賃金が支払われます。また、職務給の場合には、職務ごとの給与を決定する必要があるため、職務の定義や職務分析が必要となります。

<メリット>
・会社側の恣意性が排除されるため、支払われる金額の根拠が明朗

<デメリット>
・新しい職務が増えると都度、職務分析を行い、賃金設定を行う必要があり手間となる懸念
・担当する職務が変わると給料も変更するため、社員が職場環境として安定性に欠けると感じる懸念

②-1. 職能給(人基準型賃金)
職務遂行能力(職能)に対して、賃金が支払われます。職務遂行能力は仕事を遂行するための潜在的な能力で、必ずしも仕事を通じて発現している必要はありません。職能給は日本において発展してきた賃金体系の要素です。

<メリット>
・社員が得意な領域ややりたい仕事につけるか否かに関わらず、その人が持っている潜在的な能力に対してお金を支払うことが可能
・課長や部長等の役職が少なくなったとしても職能を高めることによって、昇給が可能になるためモチベーション向上に寄与する可能性
・人基準型であるため、異動しても賃金に変化はなく、人事異動を柔軟に実施できる可能性

<デメリット>
・職務遂行能力が何かということについて、定義・検討・周知する必要がある点が手間となる懸念

②-2. 年功給(人基準型賃金)
年齢や勤続年数のように本人がコントロールすることができない時間に基づいて、賃金が支払われます。基本的に本人の努力で賃金を高めることはできません。

<メリット>
・安定的に賃金の上昇が見込めるため、社員が安心して仕事に取り組める可能性
・人基準型であるため、異動しても賃金に変化はなく、人事異動を柔軟に実施できる可能性

<デメリット>
・いくら成果を出しても支払われる賃金が変わらないため、職務環境として刺激性が乏しくなる懸念

■まとめ
以上のように、賃金体系の構成要素は、仕事基準型賃金と人基準型賃金の大きく2つに大別されます。そして、仕事基準型賃金は能率給と職務給に、人基準型賃金は職能給と年功給に分けられます。

どの構成要素を重視すべきなのかということに、正解はありません。これは、どのような中長期の戦略に基づいて企業を運営していくか、そのためには社員にどのように動いてもらいたいのかによって、重視する賃金体系の構成要素が変わってくるためです。

一方で、企業の中長期の戦略や、その戦略を実行するために社員に求める動き方が明確になってくれば、重視する賃金体系の構成要素は自ずと決まるものだとも考えることができるのかもしれません。

[参考文献]
関本浩矢, 森田雅也, 竹林明, 上林憲雄, 奥林康司, 團泰雄. (2007). 経験から学ぶ 経営学入門. 有斐閣ブックス.