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人材の獲得源

■人材の獲得源
通常、人材を採用する場合、経験者を採用することを考える場合が多いのかもしれません。しかし、人材に対する需要が大きい仕事であればあるほど、経験者を採用することが難しくなってきます。また、新しい仕事に人を採用する場合、そもそも経験者が存在しないということも起こりえます。

更に、コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーが執筆している「ウォー・フォー・タレント」という書籍の中では、ビザの創立者である名誉CEOのディー・ホック氏の次のような主旨の言葉が紹介されています。

雇用と昇進の決定に際しては、第1に誠意、第2にモチベーション、第3に能力、第4に理解力、第5に知識、第6に経験の順に重きを置くべきだということです。

第1や第2の誠意・モチベーションは、どのような仕事をやるにしても備えているべきプリミティブな要素です。

第3や第4の能力・理解力は、仕事をこなすための能力や新しい仕事に対応する適応力のようなものです。

第5や第6の知識・経験は、知っている、若しくはやったことがある等、過去の経験からもたらされる特定領域に対して、一定のパフォーマンスを発揮できるということの証明のようなものです。これらは、他の仕事や新しい仕事に対する適応力を示すようなものではありません。

つまり、経験があるということに対しては、それほど高い価値を置いていないということになります。

経験に重きを置かないという考え方が当てはまるか否かということや、その程度は業界や業種によって異なってくるのかもしれません。

しかし、これからAI(人工知能)が発達してくると、企画力やコミュニケーション力が重要になってくることが想定され、大きなトレンドとして経験に重きを置かないという流れは進むように思います。

それでは、経験や知識に重きを置かないとしても、誠意があり、モチベーションがあり、能力があり、理解力がある人材をどのように採用すれば良いのでしょうか。

そのような人材を得るための獲得源をどのように見つけることができるのでしょうか。同書では、人材の獲得源を検討する際の切り口として、以下の5つをあげています。

①場所
②キャリアの長さ
③教育のバックグラウンド
④職業経験
⑤人物の特性

この人材の獲得源の5つの切り口について、考えてみたいと思います。

①場所
求める人物像は従来の人材と同様だとしても、これまでと異なる場所から探すことを意味しています。異なる場所とは、異なる学校、異なる企業、異なる業界等を意味しています。

②キャリアの長さ
キャリアの長短について柔軟に考えることを意味しています。例えば、キャリアを始めたばかりの新人、長いキャリアを持つベテラン、そのキャリアの退職者、または、そのキャリアに関わる何かしらの訓練を積んでいる大学生、専門学生、高校生等、キャリアの長さを柔軟に考えて採用の幅を広げることはできないでしょうか。

③教育のバックグラウンド
従来の従業員とは、異なった訓練を受けた人材や、従来の従業員よりも教育程度が高い人材、もしくは低い人材を採用できる可能性はないのでしょうか。

④職業経験
異なる職業や、異なる地位、またビジネス以外の領域も視野に入れて人材獲得を検討することを意味しています。

⑤人物の特性
従来の従業員とは異なる年齢、性別、人種、社会経済的な地位の人材を獲得源とすることを意味しています。

■まとめ
以上、①場所、②キャリアの長さ、③教育のバックグラウンド、④職業経験、⑤人物の特性の5つは人材の獲得源を検討する際に参考となる切り口ではないでしょうか。

特に、高齢化が進んでいる日本においては、②キャリアの長さの観点から高齢で元気な退職者を人材の獲得源とすることには、大きな可能性を秘めているように思います。

どちらにしましても、従来の大企業で行われてきた新卒一括採用にこだわらずに、柔軟に人材を得ていこうとすることは、企業の競争力に少なからず影響を及ぼしていくことは間違いないように思います。

[参考文献]
エド・マイケルズ, ヘレン・ハンドフィールド=ジョーンズ, ベア・アクセルロッド(著),マッキンゼー・アンド・カンパニー(監訳), 渡会圭子(訳). (2002). ウォー・フォー・タレント. 翔泳社.