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「無料」を軸にしたビジネスモデル (フリーミアム)

■「無料」を軸にしたビジネスモデルとは?
クリス・アンダーソン氏が「フリー」という書籍の中で論じた、「無料」を軸にしたビジネスモデルについて、考えてみたいと思います。

ビジネスに「無料」を取り入れている古典的な例として思い浮かぶのは、不動産業者等が行っている駅前や街角で配布しているティッシュ配りがあります。

不動産業者からすると、広告単体を配ることは困難ですが、ティッシュに紛れ込ませることによって、広告を受け取ってもらえることにメリットがあります。

また、デパ地下の飲食品店の試食も「無料」を取り入れている古典的な例ととらえることができます。

これらは古典的な例ですが、アンダーソン氏は「無料」を軸にしたビジネスモデルとして、①内部補助型、②第三者補助型、③一部利用者負担型(フリーミアム)、④ボランティア型の4つのパターンを示しています。

これら4つのパターンについて、考えてみたいと思います。

■「無料」を軸にしたビジネスモデルの4パターン
①内部補助型
[内容]
・サービス提供者とサービス購入者の間で完結するモデルで、サービス提供者はサービスの一部を無料化することによって、競争優位性を高めようとします。
[例]
・不動者業者等: 広告配布を目的とした無料ティッシュの配布
・Amazon: 配送料の無料化による差別化

②第三者補助型
[内容]
・サービス提供者はサービス受領者に無料でサービスを提供し、第三者から広告料等を徴収するモデルです。
[例]
・民放のTV局: TV番組自体は視聴者に無料で提供され、スポンサー企業から広告料を受領
・Google: 検索機能を無料でユーザーに提供し、広告掲載企業から広告料を受領

③一部利用者負担型 (フリーミアム)
[内容]
・サービス提供者はサービス受領者に、原則無料でサービスを提供しますが、一部の有料サービスを利用するユーザーから料金を受領します。
・このモデルは、Free(フリー)とPremium(プレミアム)を合わせた造語であるフリーミアムと呼ばれています。
・なお、フリーミアムはインターネットにより、サービスやデジタルコンテンツの提供コストが限りなくゼロに近づいたことから生まれたモデルです。
[例] 
・Evernote / クックパッド: 通常サービスは無料で提供し、プレミアムサービスのみ有料化
・ゲームの有料課金: ゲーム自体は無料とし、プレミアムユーザー向けにアイテム等のみ有料化
・Adobe PDF: PDFの閲覧側は無料として、作成側から料金を受領

④ボランティア型
[内容] 
・口コミや製品評価等をボランティアでユーザーに掲載してもらい、サイトの付加価値を高めて、広告収入、送客収入等で売上を上げるモデルです。
[例]
・価格.Com: 口コミを掲載してもらいサイト価値を向上させ広告収入等で収益化

■フリーミアムの考慮点
フリーミアムを推進する際の考慮点として、以下の3点があります。

・有料のプレミアムサービスを利用するユーザーは、ユーザー全体の数%に過ぎず、まず莫大なアクセスを集めることが必要となります。
・莫大なアクセスを集めるためには、無料サービスの価値を上げる必要がありますが、無料サービスを充実させすぎると、有料サービスの魅力が相対的に下がり、無料と有料のサービス品質のバランスをとることが難しい点は考慮に入れておく必要があります。
・無料サービスから有料サービスに移行するまでには、長い時間がかかり、事業として黒字化まで時間がかかる懸念があります。

■まとめ
インターネットの登場により、一度サービスやコンテンツを作り上げてしまうと、提供に係るコストが限りに無くゼロに近づいていくことがフリーミアムを生み出すことを可能にしました。

フリーミアムによって、サービス受領側はサービスを無料で使用できるというメリットを享受でき、且つ、サービス提供側もサービスが軌道に乗れば、高い利益率を期待することができます。

ただし、黒字化までに時間を要するという特性があるため、フリーミアムでビジネスを組み立てる場合には、ビジネス立ち上げ時点の資金調達先を確保することや、短期的な収益源を確保することを考慮に入れておくことが必要となるかもしれません。

[参考文献]
三谷宏治. (2012). ビジネスモデル全史. ディスカヴァー・トエンティワン.