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組織構造を定義する六つの要素(③指揮命令系統)

組織構造を定義する六つの要素の中の「指揮命令系統」について考えてみたいと思います。

①職務の専門化
②部門化
③指揮命令系統
④管理の範囲
⑤中央集権化および分権化
⑥公式化

■指揮命令系統とは
指揮命令系統とは、組織のトップから担当者までの階層において、誰が誰に報告すれば良いかを明らかにすることが目的です。何か問題があった際に、「誰に対して報告すれば良いのか」、「誰に対して責任を負っているのか」を明確にしたものです。指揮命令系統の補完的な考え方として、権限と命令系統の一貫性があります。
権限は、マネージャーが指揮命令する上で保持する必要があるものです。命令系統の一貫性とは、1人の従業員は1人のマネージャーに対してのみ直接責任を負うことを指しています。この命令系統の一貫性は、指揮命令系統が正しく運用するうえで重要な考え方です。従業員が2人以上のマネージャーから指示を受ける状況になると、1人のマネージャーが従業員のタスクを完全に把握・評価することが困難となります。そのため、命令系統の一貫性が崩れやすくなり、指揮命令系統は弱まっていきます。

■指揮命令系統の現状
参考文献として挙げている「組織行動のマネジメント」においては、近年、指揮命令系統、権限、命令系統の一貫性の必要性が弱まってきていると指摘しています。理由の一つして、ITの進歩により、下位レベルの従業員だとしても、かつては上位レベルのマネージャーしかアクセスできなかったような情報にアクセスできるようになっていることがあげられます。このことにより、指揮命令系統による指示ではなく、下位レベルの従業員が主体的に会社に大きなインパクトを与える提案やプロジェクトを推進できる環境が整ってきています。
また、組織構造も、1人の従業員が1人のマネージャーに対してのみ責任を負うような構造ではなくなってきていることもあげられます。例えば、マトリクス型の組織や組織横断型のチームなどに属する従業員は、1人のマネージャーに対してのみ責任を負っているのではなく、複数のマネージャーに対して責任を負う状況となりやすくなります。

■今後の指揮命令系統のあり方
経営者やマネージャーが指揮命令系統を考えるときには、どのようなビジネスを行うのかということを念頭に入れておくことが重要となってきます。ライン作業のような製造業を追求するのであれば、指揮命令系統を強く保持する必要があります。他方、個人のナレッジ、スキルによって、業績が変動していくような、情報産業、コンサルティングのようなビジネスや研究開発、企画系の職務においては、指揮命令系統をあまり強くしない組織を構築していく必要性があります。

[参考文献]
スティーブン P. ロビンス (著), 高木 晴夫(訳) (2009). 組織行動のマネジメント. ダイヤモンド社.