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雇用調整

■雇用調整とは?
雇用調整とは、企業内で発生する仕事に対する労働需要の増加・減少に応じて、労働力の供給の量と構成を変えることを指します。

また、正確には労働需要の増加・減少の双方で雇用調整は必要となりますが、特に減少に着目して雇用調整と呼ぶ場合が多いようです。

雇用調整には大きく、「数量調整」と「賃金調整」があります。

■数量調整
数量調整とは、仕事に対する需要が減ってきている状態で、雇用者数や雇用者の労働時間を減少させていこうとするものです。

数量調整の具体的な手段として、新規採用数削減、残業抑制、ワークシェアリング、出向・転籍、希望退職者制度、解雇等があげられます。

数量調整の中でも比較的に手をつけやすい手段は、雇用の入口である新規採用数を減少させることといえそうです。

また、残業抑制やワークシェアリングは、現状の雇用者数は変更せずに、一人当たりの雇用者の労働時間を減少させようとするものです。

出向や転籍は、グループ会社や関係者会社がある比較的に規模の大きい企業において実施することが可能となります。

そして、希望退職者制度や解雇は雇用者数を実際に削減していくことを意味しており、数量調整の手段の中で、企業・従業員双方にとってインパクトの大きな手段となります。

なお、退職金の割り増し等を行って退職者を募ろうとすることが希望退職者制度で、解雇にいたる前に実施することが多い手段です。

■賃金調整
賃金調整とは、労働需要の減少に伴って、雇用者に支払う賃金を減少させるものです。賃金調整には、ボーナス削減、ベースアップ水準の削減、定期昇給の停止・延期等があげられます。

賃金調整として、最も手をつけやすいものはボーナス削減といえるかもしれません。他方、基本給に影響を及ぼすベースアップ水準の削減や定期昇給の停止・延期には、労働組合からの反発等も考えられボーナス削減と比較すると実行に際してハードルが高いといえます。

■まとめ
以上のように、雇用調整には、「数量調整」と「賃金調整」があります。

かつて、終身雇用制度によって雇用が守られてきた日本の大企業は数量調整を行う場合でも、希望退職者制度や解雇まで実施するようなケースは少なく、ボーナス削減などの賃金調整で雇用調整を行ってきた印象を持っています。

しかし、近年では、日本の製造業大手でも希望退職者を募ることは当たり前のように行われています。このことからも、かつての終身雇用制度から雇用形態が変わってきていることが感じ取れます。

また、企業のコア以外の業務は、正規社員ではないコンティンジェント・ワーカーによって業務遂行することで、雇用者の数量調整をより柔軟に行えるようにするという考え方もあるのではないでしょうか。

かつての日本企業のような長く勤められるようなアットホームな企業を目指すのか、それともある程度ビジネスとして割り切って合理的な雇用調整を実施する企業を目指すのかは、経営者にとって決断が必要な事項だといえそうです。

[参考文献]
佐藤博樹, 藤村博之, 八代充史(著). (2007). 新しい人事労務管理 第3版. 有斐閣アルマ.