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EVP(Employee Value Proposition): 従業員価値提案

■EVPとは?
EVPとは、Employee Value Propositionの頭文字をとった略語で、日本語では「従業員価値提案」となります。

コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーが執筆している「ウォー・フォー・タレント」という書籍の中では、EVPとは「社員がその企業にいる間に経験し、受け取るすべてを総合したもの」と定義しています。

つまり、企業がEVPを高めることにより、優秀な人材を引き付け、また人材のパフォーマンスを最大化することにより、企業価値自体を高めることを目的としたものです。

通常、マーケティングとは、顧客にアピールするために、顧客のニーズや顧客満足(Customer Satisfaction)を高めるために、分析・検討されるべきものです。

他方、EVPは従業員のニーズや従業員満足(Employee Satisfaction)を高めることの重要性を述べており、インターナル・マーケティング、プロフィットチェーンに近い考え方になります。

また、これからの大きなトレンドして、単純作業から順番にAI(人工知能)に置き換わっていくことが想定されており、企業に求められる人材というのは、企画力や創造性を保持している人材になることが予想されます。

このような状況下では、いかにしてそのような優秀な人材を引き付けるかが重要となってくるため、高いEVPを保持している企業が競争力を高める傾向が強くなるのではないでしょうか。

■EVPを高める要素
では、どのようにすれば、企業のEVPを高めることができるのでしょうか?

「ウォー・フォー・タレント」の中で紹介されている優秀なマネージャーが会社を決めるときの5つの要素が、EVPを高める要素を検討する際に参考となるかもしれません。

①刺激的な仕事
優秀な人材は、知的好奇心を刺激するような、また社会にインパクトを及ぼすような刺激のある仕事を好むようです。また、自由度が高く、自分がイニシアチブをとれる環境であることも求めます。

②金銭的・非金銭的報酬
金銭的な報酬が一定水準以上であることも求められます。また、単に報酬が高いというだけでなく、努力に報いられる報酬体系となっていることも必要となってきます。

③能力開発
優秀な人材は、キャリアアップや長期的なキャリアに役に立つ経験を積み、スキルアップができることを望みます。また、フィードバックや評価制度が適正・公平であることも必要となってきます。

④ライフスタイル
仕事だけでなく、家族やプライベートの時間を確保できることを望むことも忘れることができない要素のようです。

⑤一流の会社
優秀な人材は一流の会社で働くことを望む傾向があるようです。

■まとめ
成長の途中段階にある企業にとっては、⑤の一流の会社を望むと言われると、手の打ちようがないと思われるかもしれません。

しかし、①〜④の要素は工夫や考えた方次第で、比較的に対応できる可能性もあるのではないでしょうか。

また、EVPを高めるための各要素を考えてみると、場当たり的な対応では実現することは難しい項目が多いように思います。

つまり、本当にEVPを高めようとするならば、企業における仕事の定義、役割分担、人事体系までに踏み込んだ取り組みが必要となってきます。

一朝一夕で取り組むことが難しいテーマだからこそ、EVPを高めて優秀な人材を引き付けることに成功した企業は、競合企業に対して長期にわたって優位にたてる可能性があると考えることもできるのかもしれません。

[参考文献]
エド・マイケルズ, ヘレン・ハンドフィールド=ジョーンズ, ベア・アクセルロッド(著),マッキンゼー・アンド・カンパニー(監訳), 渡会圭子(訳). (2002). ウォー・フォー・タレント. 翔泳社.